出版社内容情報
「こころの問題」を考え続けた、臨床心理学者・河合隼雄(1928-2007)。魂とは何か? 物語とは何か? 日本文学、絵本、神話、昔話、音楽まで、多領域にわたるその仕事と生涯を辿る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
104
河合先生の本には数多く接してきたが、系統だった読み方ではなかったので、生涯や著作をまとめたこの一冊は、とても有意義だった。大塚信一さんによる評伝、代表作の紹介、識者のエッセイを含め、編集が素晴らしい。科学(数学科出身)と非科学(臨床心理学)、西洋(ユング心理学)と日本人(神話や昔話)など、分野を包摂するような先生の大きさを満喫する。先生にまつわるキーワードも懐かしい:とりかへばや/あいまい/明恵上人/中空構造/箱庭療法/夢分析/コンステレーション/ウソツキクラブ/フルート…。先生の魅力満載の素敵な一冊。2023/10/17
よこたん
39
“出会いはフルート専門誌での対談でした。五八歳から習い始めた河合先生と、音大をフルート科で卒業した僕。「聞き上手のおじいちゃん」(笑)が僕の話をたくさん引き出されて、いっぺんで気が合いました。(佐渡裕)” お二人一緒の写真の笑顔が眩しくて、こちらも笑みがこぼれる。出会いは偶然でありながら、必然でもあるとしみじみ思う。亡くなられて16年も経っていたとは。臨床心理学?何じゃそれな私にでも、本の中でへんてこなダジャレを交えつつ、「ただそこにいてくれる」人。読むという行為は一方通行ではないと、信じさせてくれた人。2023/09/16
nocturne2015
11
読ともさんの感想に書かれていた頁を中心に読む。P64の、葛藤保持力が今、すごく弱くなっていて、葛藤に耐えられないのではなく、葛藤しない人が増えている、は2008年の文章。16年経ち、社会はよりこの傾向が強くなっていると思う。2024/03/31
ハメ・ドゥースト
3
魂向き合う珠玉の言葉に背筋が伸びる。【子どもの宇宙】この宇宙の中に子どもたちがいる。これは誰でも知っている。しかし、一人一人の子どもの中に宇宙があることを、誰もが知っているだろうか。それは無限の広がりと深さをもって存在している。/大人たちは小さい子どもを早く大きくしようと焦るあまり、子どもたちの中にある広大な宇宙を歪曲してしまったり、回復困難なほどに破壊したりする。このような恐ろしいことは、しばしば大人たちの自称する『教育』や『指導』や『善意』という名のもとになされるので、余計にたまらない感じを与える。2024/04/07
kaz
2
内容もさることながら、さすが別冊太陽、写真も美しい。図書館の内容紹介は『心理療法という領域を日本に切り拓いた第一人者・河合隼雄。日本人初のユング派分析家であり、箱庭療法を国内外で発展させ、広く神話や昔話などに日本人の心の深層を探った稀代の臨床心理学者の仕事と生涯を辿る』。 2024/03/16