出版社内容情報
「こころの問題」を考え続けた、臨床心理学者・河合隼雄(1928-2007)。魂とは何か? 物語とは何か? 日本文学、絵本、神話、昔話、音楽まで、多領域にわたるその仕事と生涯を辿る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
106
河合先生の本には数多く接してきたが、系統だった読み方ではなかったので、生涯や著作をまとめたこの一冊は、とても有意義だった。大塚信一さんによる評伝、代表作の紹介、識者のエッセイを含め、編集が素晴らしい。科学(数学科出身)と非科学(臨床心理学)、西洋(ユング心理学)と日本人(神話や昔話)など、分野を包摂するような先生の大きさを満喫する。先生にまつわるキーワードも懐かしい:とりかへばや/あいまい/明恵上人/中空構造/箱庭療法/夢分析/コンステレーション/ウソツキクラブ/フルート…。先生の魅力満載の素敵な一冊。2023/10/17
けんとまん1007
65
河合隼雄さんの世界。いつまでも、時間が経過しても色褪せないのが素晴らしい。子どもたちにある宇宙。一人ひとりの物語。そして、あくまで臨床に拘る姿勢。この3点は、あらゆる分野・場面でも注力すべきものだと思う。そして葛藤保持力の言葉に、その通りだと思った。ここがどんどん弱くなっているのが、今の時代に生きる人たち。これをどう考えるかは、忘れてはいけない。これからも、不定期になると思うが、河合隼雄さんの世界に触れていきたいと強く思う。2024/11/06
よこたん
40
“出会いはフルート専門誌での対談でした。五八歳から習い始めた河合先生と、音大をフルート科で卒業した僕。「聞き上手のおじいちゃん」(笑)が僕の話をたくさん引き出されて、いっぺんで気が合いました。(佐渡裕)” お二人一緒の写真の笑顔が眩しくて、こちらも笑みがこぼれる。出会いは偶然でありながら、必然でもあるとしみじみ思う。亡くなられて16年も経っていたとは。臨床心理学?何じゃそれな私にでも、本の中でへんてこなダジャレを交えつつ、「ただそこにいてくれる」人。読むという行為は一方通行ではないと、信じさせてくれた人。2023/09/16
スズコ(梵我一如、一なる生命)
17
凄い良い編集だったと思う。人生の経歴も分かり、主な著書を通しての考えがわかり、沢山の著名な方々からの言葉を通じ、その人となりがわかる。入門書としても最適だし、何より沢山の著書の中で何を読むべきか、のガイドブック的要素がある。河合隼雄先生の言葉を考えをもっともっと知りたい。2025/02/16
nocturne2015
13
読ともさんの感想に書かれていた頁を中心に読む。P64の、葛藤保持力が今、すごく弱くなっていて、葛藤に耐えられないのではなく、葛藤しない人が増えている、は2008年の文章。16年経ち、社会はよりこの傾向が強くなっていると思う。2024/03/31