出版社内容情報
熊野の「路地」をトポスとして、「紀州サーガ」と呼ばれる濃密で重層的な作品群を創出した稀有なる作家。過剰なエネルギーを蕩尽するように疾走した生涯と文学の軌跡。没後20年保存版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
14
大江健三郎の模倣から始まった中上健次の作家人生は、自身の出生を見つめることで路地を描く物語へと行きつく。その路地は、連なる物語群の中心的トポスとなり、ついには紀州熊野サーガと呼ばれる神話を形成するに至るも中上は、その路地を次なる文学的ステップのために解体してしまう。その目はアジアを向いていたとも言えるし、そもそも国境や民族を超えたモノを見据えていたのかもしれない。ただ、はっきりとしているのは、中上健次という作家は、もうこの世にはいないという事実だ。(つづく)2014/11/16
スミス市松
11
もがき苦しむ青春小説から始まり、その狂おしい愛憎を自らの血/地に注ぎ込み神話的空間にまで高めた「紀州サーガ」と呼ばれる物語群を立ち上げ、しかし自らの手でその源泉である「路地」を葬り去り、「物語の定型」の利用と破砕を反復させながら、眼差しは南方へ、路地を失ったその眼に映る世界とは、そこであらわれる物語とは一体どのような形態をとるのか、捉えようとしていた矢先の死だった。改めて、中上健次という作家はただ書くことに安住せずその先にある何かをつかまえるためには自らのスタイルをも棄て去る、変動し続ける作家だと思った。2013/05/25
2
充実した内容。2016/12/19
ぶらしゅうへい
0
ガイドとして優れている2017/04/08
URYY
0
郁男のモデル、中上の死んだお兄さんの写真、浜村龍造のモデル、鈴木留造の写真、中上の新鹿のマンションの蔵書写真などなど、研究にとっても重要なものが多い。数々のメモ、ノートの類も、きちんと体系的にまとめることはできないもんかなあ。これはとても、とてもよくできた〈本〉だと思います。ただやっぱり、冒頭に柄谷行人来ちゃうんだなあ、という感慨。2012/09/19
-
- 電子書籍
- 12色の色鉛筆で描く ちいさなイラスト…