出版社内容情報
歴史上、内部に複雑な多様性を抱えざるを得なかった「台湾」という概念はどうつくられてきたのか。台湾在住の日本人である著者が、変化しつづける台湾のイメージを分析。
内容説明
近年、「アジアの優等生」として語られがちな台湾。だが、本当にそれだけが台湾の姿なのだろうか。「台湾」についての語りと記憶の交差点から見えてきたのは、これまで見過ごされてきた多層的な台湾の現在地だった。そしてさまざまな記憶を共有する存在として、日本はいま「家族」=台湾を知る必要がある―。知っているようで知らない「隣人」の姿を現地在住14年の日本人研究者が描き出す!
目次
第一章 台湾へのまなざし
第二章 台湾のはじまり
第三章 その言葉はだれのものか―言語をめぐるカルチュラル・ポリティクス
第四章 「台湾らしさ」とはなにか―抵抗の諸相
第五章 「台湾らしさ」とはなにか―包摂の諸相
終章 「家族」としての台湾
著者等紹介
康凱爾[コウカイジ]
日本名:出田康一郎。台湾研究者。専門は台湾文化論。1981年東京都生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。2011年から台湾在住。東京の教育系ベンチャーにリモートで参画し、プログラマとしてソフトウェア開発に従事する傍ら、日常生活を通して台湾について考えている。現在、國立臺灣師範大學臺灣語文學系碩士班に在籍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
95
ザっと台湾史。言葉が丁寧。2025年6月刊行2025/09/07
chang_ume
8
「親日な台湾」という日本側からの台湾観に対する問題提起を切り口に、葛藤を続ける台湾アイデンティティの変転について腑分けする。問題設定そのものに異論はないですが、いかんせん90年代カルチュラル・スタディーズ由来の思考鋳型がむき出しすぎて、概念操作にややくどさを感じた。巻末で紹介された編集者の助言のとおり、筆者の生活史を通じた事例蓄積や台湾史の生々しさにもっと重点を置いた方がよかったのでは。文化左翼言説のふわっとした気分の良さになってはしませんか。問題設定自体は優れていただけに残念です。2025/09/10
ichigomonogatari
8
知っているようで知らない台湾の複雑な姿とその背景にある事情を伝えてくれる本。明、日本、国民党と支配者が変わりながら長きに渡り抑圧されてきた台湾は、その時々の支配者に彼らの文化を押し付けられてきたことに加えて移民国家ゆえ文化や言語が多様で多層的だという。「台湾らしさ」や「台湾人」をめぐるアイデンティティはどのように形作られてきたのか、それが台湾社会にどう作用しているかに着目。かつての日本文化や中国文化を再解釈し包摂すること、それが「台湾らしさ」ではと。台湾の複雑さにちゃんと向き合うことの大切さを訴える。2025/08/06
Hatann
7
台湾在住14年の日本人研究者による台湾学のススメ。サイードやスピヴァクを援用して、日本人が台湾を語るに日本人自身の存在を含めて語る必要を示す。台湾の歴史と言語状況を紐解き「台湾らしさ」を、外部との相違、内部での包摂の両面から分析する。漢字を日本文化と捉えるのと同様に、台湾人が複雑な過去をそのまま引き受けて将来に向かい「台湾らしさ」を語ること、過去の記憶を共有する日本人も自己や共同体の再定義とともに新たな関係性の構築に向かうべきことを語る。布農族が「カミサマ」を日本人と同義に使用するという指摘に驚く。良著。2025/09/23
左手爆弾
3
一貫して台湾についての「まなざし」や「語り」を問題にした本。スピヴァクやソンタグなどの理論を応用している部分もある。たとえば、日本人が語りたがるのは「親日的な台湾」であり、コロナ禍での「優等生」としての台湾である。歴史を振り返ると、原住民の時代、オランダ統治、清統治、日本統治、中華民国、民主化など、一本道ではいかないものの、それぞれが台湾のアイデンティティになっている。台湾に懐かしい「日本らしさ」を見出すことはできるが、それは日本人のために作られたものではなく、台湾人自身が見出したものである。2025/10/10
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