出版社内容情報
バブルの崩壊、アメリカ同時多発テロ、リーマン・ショック、阪神淡路大震災……。行き場を失った平成時代を、社会や世相を反映することの多いミステリー作品を通して振り返る。
内容説明
平成時代は、バブル崩壊や阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件など、昭和の繁栄をあざ笑うかのように不況や災害に見舞われた。少子高齢化に伴い、認知症や介護など老人問題も表面化、欧米のジェンダー思想や個人主義的価値観が浸透したことにより、家族を社会の基本に置く考え方も大きく変わっていく―。果たして、社会や世相を反映することの多いミステリーは、平成時代をどう捉え、何を語ってきたのか。六つのテーマで三一年間を振り返る。
目次
序章 昭和のミステリーを振り返る
第1章 バブルの崩壊―繁栄を謳歌した昭和の反動とは
第2章 多様性とは
第3章 平成の家族と人々
第4章 歴史を求める
第5章 新たな脅威―ウィルス、開発、自衛隊
第6章 異郷からの目
著者等紹介
古橋信孝[フルハシノブヨシ]
1943年東京都生まれ。東京大学文学部国文科卒業、同大学院博士課程修了。武蔵大学名誉教授。84年「古代のうたの表現の論理」で第1回上代文学会賞を受賞。99年「和文学の成立」で文学博士(東京大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
125
題名は『エンタメで読む平成時代』とすべきか。広義のミステリのみならずSFやホラー、歴史小説まで取り上げて、平成期の様々な事件や出来事を文学がいかに受け止め反映したかを論じていく。昭和のような巨大な戦争はなく、松本清張や司馬遼太郎のような万人に知られる大作家もいないので、不況や災害や犯罪で痛めつけられた日本と日本人の怒りと悲哀は大きな方向性で収斂せずバラバラの放射状になっていく様子が見て取れる。そこから生まれる怒りと鬱屈をどこにぶつければいいのか、日本人の戸惑いが物語を書く側と読む側に共通していると思えた。2024/11/20
緋莢
14
図書館本。<平成時代をどう捉え、何を語ってきたのか。六つのテーマで、三一年間を振り返る>(内容紹介より) バブル崩壊、大きな災害、家族、多様性などのテーマごとに、ミステリ作品を絡めて書いています。最初に書いてしまいますが、これ壁本でした。購入して読んでいたら、間違いなくぶん投げてます。図書館で借りて本当に良かった。奥田英朗や葉真中顕、桜庭一樹など複数作品取り上げている作家がいるのは、まだいいとして、このタイトルで宮部みゆきを一作品も取り上げていないのは「正気ですか?」レベル(続く 2025/02/17
み
12
ミステリーというタイトルに惹かれて久しぶりに新書を読む。がっつり各小説のネタバレに触れてるので、注意が必要。ミステリー小説をきっかけに平成時代を振り返る、という試みでした。八咫烏シリーズのネタバレ踏みそうで危なかったー!(文庫派)筆者の考える多様性のくだりには大いに納得。2024/05/27
そうたそ
9
★★☆☆☆ ミステリから戦後史を紐解いた前作に引き続き、本作では平成という時代をミステリを通して振り返っている。ただ、やはりどうしても一つのトピックに対し、一作か二作という構成なので、内容的には作品紹介の域を脱していない。堂々とネタバレがされているのもいただけない。よほどミステリを読み込んでいる人でもない限り、こんなところで地雷を踏むのも嫌だろうと思うので、安易におすすめはできない。2024/09/24
Танечка (たーにゃ)
6
文芸作品はその時代の事件、事故、社会問題、価値観、常識に多かれ少なかれ影響されて書かれるもの。ひと昔前の(自分が生まれていない、あるいは幼いころの)作品にいまいち入り込めないことがあるのは、当時の人には当たり前だった感覚や知識が自分にないからなのだな、と再確認。 1セクションはミステリ1作品×時代背景の解説という構成になっている。各セクションは、その作品を読んだことがあるか、その当時の空気感を実際に知っていた方が楽しめると思われ。2024/07/01