出版社内容情報
日本はサムライの国か? 昭和前期には軍国主義へと結びついた「武国」日本意識の来歴を探り、そこに潜む罠を剔出する。
はじめに
日本人の自意識/平和とサムライ/「神国」意識と「武国」意識
第一章 「神国」日本
1 「神国」とは何か
日本 ヨイ國、強イ國/神功皇后説話/神功皇后説話の変容/神功皇后説話の影響
2 平安・鎌倉時代の神国意識
神に守られる国/神を祭る国/神々の充満する国/野蛮未開の「神国」
神国と辺土のバランス/『平家物語』「教訓状」/皇室擁護・自国優越意識との関連
神頼み/神の力と「もののふのてがら」
3 蒙古襲来と自国観
「よろづの国にすぐれたる国」/日本の武具と武士の優越/東巌慧安の自意識と妄想
「武」は国家を乱す/「神風」としての総括/文永の役と武士の活躍
鎌倉武士たちの関心と視点/神国思想と蒙古襲来
第二章 弓矢の誇りと「武」の価値
1 弓矢の誇り
『松浦宮物語』/和国は兵の国/「武」の自意識の芽生え/弓矢の誇り
弓矢自慢と中国との対比/日本の合戦/大矢を射る武士たち
弓矢の誇りと「東夷」意識の克服/自国意識の成長
2 「武」の価値と軍記物語
軍記物語と「武」/『平家物語』と戦争被害/『平家物語』の義経
武士=夷への蔑視/「文武二道」/下降史観と「武」/東アジアの「文」重視
「武威」の用法/時代の変化と価値観の変化
3 武士の自意識の発達とその表現
「兵の道」/『平家物語』の「弓矢の道」/『太平記』の「弓矢の道」
『太平記』と武士/『義貞軍記』という作品/『義貞軍記』の「道」
『甲陽軍鑑』の「武士道」/武士と和歌/「文」への対抗としての「武」
第三章 「武国」意識の成立と展開
1 秀吉の「武国」意識と朝鮮出兵
日本弓箭きびしき国/秀吉の武国認識/「武」の日本、「文」の中国
吉野甚五左衛門の自国認識/吉野甚五左衛門と文禄の役
慶長の役と『朝鮮日々記』/朝鮮出兵の終わりと語りの始まり
朝鮮出兵の美化/批判と反批判/近松門左衛門「本朝三国志」/民衆に残る記憶
2 「武国」意識の理論化
「武国」理論の登場/吉川惟足の「武国」論/「武国」史観/吉川惟足の位置
山鹿素行の「武徳」論/『中朝事実』の背景/山鹿素行の歴史観
「天瓊矛」と井沢長秀/「武国」論の定着/明清交替と「武」の下降史観
自他共に認める「武国」/「武」の下降史観の変質/会沢正志斎『新論』の歴史観
近頃の武士はたるんでいる
3 ナショナリズムと「文武」
幕末の危機と『尚武論』/『尚武論』の歴史観/『尚武論』の反「文」と「武士道」
「武国」論と儒学/ナショナリズムと儒学・国学/建前と本音、理想と現実
「武国」論と反知性主義
第四章 「武国」から「軍国」へ
1 「武国」意識の広がり
「武国」意識と庶民/『漂流記談』/漂流者音吉の「武国」意識
アメリカは日本の武威を恐れたか/武国意識と義経の物語
蝦夷地への関心の高まり/近松門左衛門の問題/英雄渡航伝説
義経渡満説/義経ジンギスカン説の登場/義経ジンギスカン説と小谷部全一郎
2 幕末維新期の「武国」論
吉田松陰の「武国」意識/「急務策一則」の危機意識/『幽囚録』の歴史観
『幽囚録』と近代日本/尊皇の志士・平野国臣/「武国」論と明治維新
3 「武国」論と「軍国」日本
軍制改革と『軍人勅諭』/『軍人勅諭』の歴史観/『勅諭衍義』と「武国」神話
近代「武士道」論と「武国」論/足立栗園『武士道発達史』
『武士道発達史』と「武国」神話/井上哲次郎の『武士道』/重野安繹と「武士道」論
昭和の歴史学と「武士道」論/戦時下の「武国」論/「軍国」の国民道徳
おわりに
「武国」論の流れ/伝統とは何か
参考文献
依拠テキスト
あとがき
佐伯 真一[サエキ シンイチ]
著・文・その他
内容説明
日本人がいまなお持つ「サムライ」という自己像―日本は「武国」だという意識は、一六世紀末頃から始まり、二〇世紀前半、「軍国」意識として頂点に達した。しかしそれまで一〇〇〇年の歴史時代、この国の人々の自国イメージはまるで異なっていた。なぜ、どのように、「武国」意識は育ったのか。そこにどのような「詐術」が含まれていたか。古代から現代まで、「詐術」をも含んだ自国意識変遷の道筋をとらえる。
目次
第1章 「神国」日本(「神国」とは何か;平安・鎌倉時代の神国意識;蒙古襲来と自国観)
第2章 弓矢の誇りと「武」の価値(弓矢の誇り;「武」の価値と軍記物語;武士の自意識の発達とその表現)
第3章 「武国」意識の成立と展開(秀吉の「武国」意識と朝鮮出兵;「武国」意識の理論化;ナショナリズムと「文武」)
第4章 「武国」から「軍国」へ(「武国」意識の広がり;幕末維新期の「武国」論;「武国」論と「軍国」日本)
著者等紹介
佐伯真一[サエキシンイチ]
1953年、千葉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、青山学院大学文学部教授。専攻は日本中世文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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