出版社内容情報
自ら進んで早朝出勤し、サービス残業にも何の不満を示さない。今日の日本人に見られる「勤勉精神」はいつ誕生し、いかに定着したか。
内容説明
常態化した長時間労働、進んで引き受けるサービス残業、苛酷なノルマや理不尽なパワーハラスメントの横行―。過労死・過労自殺への道を、みずから歩みながら、不満を表明することさえしない日本人。そうした「勤勉精神」は、いつ生まれたのか。どういう系譜をたどって、今日にいたったのか。私たちを「勤勉」に駆りたててきたものは何か。そのメカニズムを歴史的に探る。
目次
序章 日本人と「自発的隷従」
第1章 日本人はいつから勤勉になったのか
第2章 二宮尊徳「神話」の虚実
第3章 二宮尊徳は人を勤勉にさせられたか
第4章 浄土真宗と「勤労のエートス」
第5章 吉田松陰と福沢諭吉
第6章 明治時代に日本人は変貌した
第7章 なぜ日本人は働きすぎるのか
第8章 産業戦士と「最高度の自発性」
第9章 戦後復興から過労死・過労自殺まで
終章 いかにして「勤勉」を超えるか
著者等紹介
礫川全次[コイシカワゼンジ]
1949年生まれ。在野史家、歴史民俗学研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
29
著者は在野史家。ラ・ボエシ『自発的隷従論』(10頁~)。これはみずからの意思によって自発的に圧制者に隷従しているのだということ(11頁)。M的国民性か。それでこの間の選挙でもマスコミ想定どおりの結果に帰結したのか? つまらない。個人ではなく、集団になって流されるからのようにも思われる。二宮金次郎の唱歌2番に、夜なべ済まして手習読書(41頁)とある。読書と勤勉の関係とは。尊徳は勤勉にして謙虚な村民を育てていこうとしていた(58頁)。実は村民が尊徳のやり方に不満を募らせていたとの指摘は知らなかった(61頁)。2015/01/09
きいち
21
働き方を考えるヒントにあふれる一冊。◇解体される日本人=勤勉神話。古来のものではなく、江戸中期以降真宗や尊徳、諭吉、松下幸之助…と順次多数派を形成したもの。宮本読んでると納得感大。◇自発的隷従や強制的自発性、などという言葉、ブラック企業や過労自殺を思うと、一刻も早くこの状態を脱しなければと考えるが、ことはそう単純ではない。心に沁みとおった勤勉=美徳の価値観は、必ずしも悪いものばかりじゃないから。そこで櫟川が提言するのが、正しく怠ける、その哲学。◇勤勉と怠惰を両立させればいい。多元的な自己が出口な気がする。2020/07/12
中年サラリーマン
18
ブラック企業糾弾一色の論調なのかと思いきや、舞台はいきなり江戸時代に飛び日本人が勤勉になった歴史的経緯を追っていく。そのアプローチがとても面白い。最初は日本人もすべての人が勤勉ではなかったらしい。それが色々な歴史的経緯で勤勉性を発揮していく。この本を読んで欲しい。その後のあなたに今現在、その勤勉性はどこから生まれてきたのか?そしてそれを支えるものは一体何なのか!と問いましょう。どう答える?読んでみると面白いかもよ。2014/10/09
NICK
17
自ら進んで労働に服従する態度「自発的隷従」という観点から日本人の「勤勉」の起源を探る興味深い本。ウェーバーはプロテスタントの「勤勉」のエートスが資本主義の発達に寄与した、つまり「宗教」が経済活動に強い影響を与えてたと論じたが、日本においては「浄土真宗」が「勤勉」エートスの起源にあるという。そも宗教とは「自発的」な信仰によって神に「隷従」する営みであると言っても過言ではない。昨今のブラック企業問題についても「宗教」をキーに考えるとうまくハマるのではないか。つまり、労働を神格化する言説がそこにありはしないか2014/11/17
どら猫さとっち
8
ブラック企業が問題化しても、苛酷なノルマや理不尽なパワハラにサービス残業に進んで引き受けるのは何故か?それは、日本がこれまで美徳とされてきた「勤勉」にあった。本書は、その「勤勉」の歴史を探り、その精神の正体を炙り出していく。二宮尊徳から現在までの、苛烈にしてまで働くこと。これが、労働する人たちの心身を蝕んでいく。この国の勤勉は、かなり異常だ。もう一度、人間らしい働き方を考えなければ、勤勉の真の意味を探り変えていかなければ、苛酷な勤勉地獄から脱することはできない。2017/04/23
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