内容説明
誰もが知る、世界で最も有名な物語―。従来の伝記的事実を丁寧に洗い直し、最新の資料・研究をもとに新たな解釈を提示。作品の物語世界と作者の実人生とが偶然にも重なり合い、その最晩年に美しく見事に結晶する様を描く。世界各国、子どもから大人まで―あらゆる人々を魅了し続ける物語の不思議とは。
目次
第1章 王子さまの物語はこうして書かれた
第2章 「近代社会」を生きる苦悩
第3章 『星の王子さま』を準備したもの
第4章 文体とナレーションの技法
第5章 ストーリー構成から見た諸作品との関連
第6章 「大切なものは目には見えない」の深い意味
第7章 わがままなバラの花の物語
第8章 反映される同時代の政治状況
第9章 『星の王子さま』神話の成立
第10章 サン=テグジュペリ神話の成立
第11章 日本へのインパクト―宮崎駿を中心として
著者等紹介
稲垣直樹[イナガキナオキ]
1951年、愛知県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。パリ大学にて文学博士号取得。日本翻訳家協会より日本翻訳文化賞受賞。現在、京都大学大学院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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H2A
17
『星の王子さま』を読んで時間が経たぬうちにと読んでみた。作者の自伝的なところ、他の作品の内容にもひととおり触れていて参考になるが、献辞されたレオン・ヴェルトは結局どうなったのだろうかと思った。それに単純過去、複合過去の用法など多少の復習になる。それに、”apprivoisier”の訳語が「なじみになる」とは離れ業だ。翻訳技術について主張のあるこの著者ならではか。2017/01/29
はちめ
5
星の王子さまが書かれた背景などが知りたくて読んだ上でこんなこと言うと怒られるが、背景を知ったからといってあまり満ち足りた気持ちにはならなかった。背景とか気にせずに自分が好きなように読むのが良いたぐいの本なのだ。サンテグジュペリが乗っていた飛行機の残骸が21世紀になって確認されたとのことだが、永遠に行方不明の方が良かったように。本書にケチをつけるつもりではありません。巻末の宮崎駿への影響は面白かった。☆☆☆★2019/04/29
葉菜枝
4
「星の王子さま」解説書。「星の王子さま」思っていた以上に奥深い。読んでよかった。王子さまのバラのモデルとされるサン・テグジュペリの妻コンスエロ。「わがまま」どころじゃない凄さだった。サン・テグジュペリさぞかし苦労したんだろうなと思いきや・・・あらら。ここ読んでいてちょっとショックだった。キツネが語る「apprivoiser」という言葉。「飼い馴らす」や「仲良しになる」と訳している本もあったけれど、ここはやっぱり筆者がいうとおり「なじみになる」が一番合う気がする。2012/08/11
shouyi.
3
「星の王子さま」の訳者による、作者サン=テグジュペリの生涯とその作品のおおまかな内容などが語られている。死ぬまで大空への憧れがあったのかな。妻との確執などもあったようだが、全く俗っぽい感じがしない不思議な人だ。不思議な寓話「星の王子さま」を再読したい。2016/12/27
ルイ
2
作者本人の実像を知るとちょっと・・・と思ったけど綴っている言葉はとても素敵だと思う。宮崎駿作品の基盤はサン=テグジュペリだったとは全然気付かなかった。2011/07/15