内容説明
日本映画が洋画の後塵を拝し、斜陽のどん底に喘いだ七〇年代。しかし、セックスとバイオレンスに活路を見出した日本映画は、若者たちの知的興奮を駆り立て、熱い共感を集めた。映画表現の、その過激と破天荒は、新作映画が虚ろに賑わう現在を衝く。いま、鮮烈に甦る、異形の「名画」、堂々の一一〇本立て。
目次
第1章 セックスとバイオレンスの饗宴(実録やくざ路線のバイオレンス;ロマンポルノ路線の挑発と抒情;性が起爆させるバイオレンス)
第2章 狂い咲くジャンルの妙味(青春のニヒルな彷徨;アクションの新生面とカンフーブーム;エロスと残酷の時代劇;スケバン戦闘少女の割拠;カーアクションの模索;メロドラマとラブロマンスの光芒;本格探偵ミステリと社会派サスペンスの競作;怪談からオカルトへ;洋画ふうソフィスティケーション;おまけ短篇と編成の妙)
第3章 異文化と映画のスパーク(マンガ・劇画への挑戦;歌謡曲・演歌・ポップスの抒情;文芸作品の触発)
第4章 日本映画の世代交代(撮影所の外からの新しい波;時代を浮遊する女優たち)
著者等紹介
樋口尚文[ヒグチナオフミ]
1962年生まれ。映画批評家。早稲田大学政治経済学部卒業。大手広告代理店のクリエーティブ・ディレクターとして多数のテレビCMを企画・制作するかたわら、『キネマ旬報』などで批評活動を展開(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
37
凋落極まった1970年代の邦画界は数々の怪作奇作を生んだ。その精髄をポルノと実録やくざ物中心に、アクションやオカルト物まで語り尽くした一冊。レビューの他、制作の背景、監督や俳優の評価、時代的価値など、映画に詳しくなくても面白い。著者の少しニヒルな語り口と厭世観はこのテーマに合う。私は当時十代。この年になって理解できた嬉しさもあり、貧困で粗暴な空気感もリアルに思い出せた。人間の業は悲惨と美の源泉で、潔白な者など居ない。1970年代の邦画に満ちた反逆性は、停滞の気配が広がる度に蘇ってくるのかも知れない。2019/12/08
kinkin
36
70年代に制作された映画、大作ではなく、実録ヤクザ映画やロマンポルノといった当時は一般向けとはいえない映画について書かれている。タイトルを読むととても猥雑で隠微さがある反面、おおらかさにもとれることに気づいた。ネット社会の今、その利便性と同時に、いつでもどこでも誰にでも、自ら足を運んで劇場に行くという行為なしにもっと過激で残酷な動画や画像を閲覧することが出来る。学生運動などの衰退とともにこうした映画は、当時のガス抜き的な役割もあったのかもしれない。今より、まだまだ先が明るい時代だったことを思いだした。2014/12/01
ヒデキ
34
今回は、タイトルしか聞いたこともない作品やタイトルも知らない作品が、多くて今度、vodで探そうと思いました 角川映画の足音が聞こえてきた時代、 いつも2本建てだったよなあと思いながら読んでました。 2023/10/05
山田太郎
28
乳出しとけばあと何やってもいいみたいなめちゃくちゃな状況なんで、すごい混沌としたというか面白いな。タイトルだけでも笑えるというか。でも、あらすじ知ってれば見てみようかとあんまり思わないなと。通勤電車でカバーもせずに読んでましたが、あんまり人前で読む本じゃなかったなと。温泉みみず芸者はバンドするなら、このバンド名がいいかなと。2021/05/16
HERO-TAKA
11
近年に逆転するまで続いていた「洋高邦低」。70年代には、日本の映画産業は斜陽にさしかかっていた。打開策のひとつがセックスとバイオレンスを見せ場とした中小作品の提供。この場でタイトルを書くのも憚られる、ただただ俗悪な作品があるなかで、特異な面白さを獲得した作品も存在した。現代では絶対に期待できない、昭和の日本だからこそ生まれ落ちた作品をご覧あれ。2017/03/11