内容説明
化学染料には出せない日本の伝統的な色がある。京都の染屋の当主が、朱・赤・藍・黄・黒・白・紫を求め、紅花の里、三重県伊賀市と山形県河北町を訪ね、阿波徳島の農家で藍栽培の苦労を聞き、熊野のお燈祭に参加し、正倉院の宝物を観る…。全国を旅するなかで、染色と色の知識が存分に語られる、味わい深い自然派エッセイ。
目次
第1章 朱の色を歩く
第2章 赤の色を歩く
第3章 藍の色を歩く
第4章 黒の色を歩く
第5章 白の色を歩く
第6章 黄と黄金の色を歩く
第7章 紫の色を歩く
著者等紹介
吉岡幸雄[ヨシオカサチオ]
1946年京都市生まれ。染色家。早稲田大学卒業。「染司よしおか」五代目当主を継ぎ、伝統的な植物染による日本の色をあらわす。東大寺、法隆寺、薬師寺、石清水八幡宮などでの行事に用いられる造り花、衣裳、道具等を制作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たびねこ
9
著者は寺社の衣装なども手がける京都の染色家(主に植物染)。弁柄、丹朱、鉛丹など土由来の色、江戸紫、京紫など文化直結の色遣い、色と生地の相性、色を定着させる媒介液(椿の灰など)の役目など、日常気にとめたことがない記述が、文章も巧みで楽しい。色と風土、色と政治、色と宗教、伝統的な「日本の色」というのは、清く、繊細のようで、案外したたか。2016/05/26
k.m.joe
5
文章の上手い方なので、ついつい読み込んでしまう。専門的な事は記憶には残らないだろうけど、先人が大地や自然の一部であった事実は感動する。2013/06/05
phmchb
3
石清水八幡宮・御花神饌(p69)/『神々の国の首都』小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)(p87)/胡粉製造所・三室戸(p159)/宇和泉貨紙、西予市野村町・シルクとミルク(p191)/天藤製薬・紫草の根・ボラギノール(p221)2020/09/09
志村真幸
2
著者は美術工芸の出版社・紫紅社の創立者。また、京都の「染司よしおか」の五代目。染色や意匠に関する著作が多い。 本書は、紅花、藍、刈安、紫草、ラックなど日本で伝統的に染色に使われてきたものを訪ね歩いたエッセイ集だ。 紅花なら産地の山形はもちろん、伊賀での栽培を復活させたり、紅花で染めた甲冑を見に行ったり。色というものを切り口にすると、こんなにもいろいろ見えてくるのかと感心させられた。 ラックカイガラムシの移入のため、ウチワサボテンを育てる計画が江戸期にあったとは知らなかった。 2019/12/25
さんとのれ
2
染司よしおかの当主吉岡幸雄氏による日本染所紀行。同様の本は多いけれど、これは文化、歴史、技術面にも触れていて、ちょっと硬派な旅行記。染の歴史を辿る探求心だけでなく、その中で見つけた新しい発見にためらわず挑戦する好奇心を持つことも伝統を生かしていくうえで大事な態度なんだろう。2015/07/05