内容説明
ダム建設ですみかを奪われるイトウ、コウノトリの野生化への試み、頻発するツキノワグマとの遭遇、増え過ぎたイノシシやエゾシカによる被害、外来種アライグマやセイヨウオオマルハナバチが引き起こす生態系の撹乱等々、日本列島では野生動物をめぐる多様で複雑な問題が生じている。絶滅危惧種など、動物との共存のために苦闘する人々の姿と解決策を各地に追う。
目次
第1章 ダムに風穴を開けろ!
第2章 田園に舞え、コウノトリよ
第3章 ぼくらツキノワグマ予報官
第4章 飛ぶ鳥を落とす風車
第5章 キューダイ方式が里山を救う?
第6章 西洋大円花蜂、知床半島に接近す
第7章 アライグマ鎮魂歌
第8章 野生動物とサスティナブルなおつきあい
著者等紹介
平田剛士[ヒラタツヨシ]
1964年広島市生まれ。北海道大学大学院工学研究科中退後、北海タイムス記者を経て1991年からフリーランス。北海道工業大学非常勤講師。環境問題を中心に取材活動を続け、「週刊金曜日」などにルポ記事を寄稿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やすらぎ
127
野性動物と人間社会との間の軋轢緩和をテーマにした本書。倶知安町の砂防ダムに風穴を開ける。豊岡市の田園に舞うコウノトリ。養父市のツキノワグマの行動範囲調査。宗谷岬の鳥に厳しい風車建設。九州大学の里山。アライグマの繁殖力とイノシシの棲みか生息域拡大。…動物にとっては棲家を破壊されてさまよい、人にとっては食害に悩む。それぞれの地域での取り組みに登場する人たちは、みんな自然を愛している。動物との共生を目指している。よかれと思ってやったことが失敗し、学ぶ日々。双方の持続可能な関係を構築し直すことはできるのだろうか。2019/03/07
kinkin
63
「週刊金曜日」に連載加筆されたもの。イノシシのような害獣?コウノトリのような絶滅に瀕する動物との共存について書かれた本。ただ自然を守ろう、害獣はけしからんという内容ではない。人が便利さや快適さ、娯楽を追求してきたことが現在の状況を産み出しているのではないか。鳥獣による各地で多くの被害が出ているなか、狩猟力、農村力を上げていくことが重要ということをこの本で知った。コウノトリやイトウ、ツキノワグマ、セイヨウマルハナバチ、アライグマ、風車によるバード・ストライクなどが取り上げられていた。2016/09/20
Humbaba
3
伝統農法と密接に関わって保全されてきた環境は、周囲の環境が変化すれば自然と淘汰されてしまう。キャンパスを新しく開くためには広大な土地が必要であり、それを開拓すればその環境変化の影響は計り知れない。自分の属する大学がそれを進めようとするならば、どうにかして影響を減じる必要がある。そのために必要な労力は膨大だったとしても、それをやらずにいたら自分たちのやってきたことが無意味になってしまいかねない。2024/04/26
Miyagawa Yoko
3
タイトルの言葉、言われてみるとたしかに不思議。本書は、絶滅危惧種を保護する取り組みと、増えすぎた野生種を適正な数にするための取り組みが書かれている。2012/07/19
大喜多さん
2
自然を守ること、共存することは、口で言うのは簡単だけど、実際は余計なことばかりのようで。北海道のイトウの棲息地の川に作ってしまったダムを改造した話は感心しました。国も間違えを認めて、作り直すことできるんだね。この本、2007年なので、現在の状況を調べ直さないとな。2021/02/09