内容説明
サンカとは何か。それは実像なのか、虚像なのか、幻像なのか。これらの問いに正しく答えられる人物は、おそらく一人しかいない。山窩小説家、サンカ研究家として知られた三角寛である。三角は昭和初期にサンカに注目し、その存在を世に知らしめた。その後、サンカに関する情報を「独占」した彼は、昭和三〇年代にサンカの消滅を見届け、その歴史の終結を宣言した。これまでに語られたサンカ論の系譜を丹念にたどりながら、消えた漂泊民サンカ、そして三角寛という人物をめぐる謎に迫る。
目次
序章 抗議する三角寛
第1章 サンカとは何か
第2章 説教強盗と三角寛
第3章 犯罪集団としての「山窩」
第4章 柳田國男が見た幻影
第5章 サンカの発生
第6章 三角寛、その知られざる一面
第7章 『サンカ社会の研究』を読む
終章 戦後の三角寛とサンカ研究
著者等紹介
礫川全次[コイシカワゼンジ]
1949年生まれ。ノンフィクションライター。歴史民俗学研究会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
25
サンカについては、結局よくわからない。三角寛については「ひとのみち教団」との関わりの部分が非常に面白く。最後に「三角寛の評伝が必要」としているが、この著者に書いて欲しいところ。2017/05/27
jackbdc
8
”サンカ”小説家、研究家として知られた三角の人物像を掘り下げる本。私自身は三角の事を知らず興味もないが、私だけでなく少なからぬ日本人が”サンカ”に惹きつけられたのは”サンカ”に何かがあるのだろう。通読により考えたのは”サンカ”が持つリアリティと幻想の微妙なバランスが思い込みを重ねる余地があるのが良いのかも。ある人は自身の憧れを重ね、ある人は現代への不平不満を重ねる。そういう余地が見出されたのだろう。ある意味社会現象かもしれない。私の場合は柳田同様で失われた狩猟採集的な幻想を見出す事に楽しみを覚えている。2022/02/05
塩崎ツトム
8
民俗学の本をいくつか読んで、「サンカ」に興味を持ってパラパラと調べているけれど、知ろうとすればするほど、研究者の無理な理想像の投影、警察からの又聞き、話題性を持たせるための創作などにぶち当たって、どんどんと雲を掴むような状態になる。「まあ、漂流民にまつわる話なんてそんなモンだろ」と割り切ろうにも、際限なくモヤモヤが積み重なるばかりで、もう調べるのやめようかしら。2014/01/02
つちのこ
4
戦前のサンカ研究者、小説家である三角寛を追った作品。竹細工と川魚漁を収入の糧として、山を移動して集落を渡り歩いた漂泊民・サンカは古来から存在したと考えられるが、差別に加えてそこに犯罪集団としての概念が入ったことによって、今日伝えられるサンカのイメージが作られたといわれている。その誤解を誇張し、助長したのが三角寛が発表した一連のサンカ小説である。一方で三角は学術的なサンカ研究をしており、名誉欲と人間性も絡んでいたようだ。サンカの謎を解きほぐし、真実を追求することは今も続く課題である。(2005.10記)2005/10/31
amabiko
4
ひとのみち教団がサンカとどう関わるのか、と不審を感じながら読み進めると・・・思いもかけない仮説にびっくり。論点が多いので、読み手の側の注意力が少し散漫になってしまった。著者によるサンカ論はすでにあるので、今度は三角寛の「本格的な評伝」が読みたい。2018/08/30
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