内容説明
明治の洋装本以来、日本の装幀文化は、時を追って深みを増し、奥行きを広げていった。編集者による仕事、詩人による仕事、著者自装、画家、版画家、イラストレーターたちによる仕事。そして杉浦康平と杉浦を師と仰ぐデザイナーたち。また一方、独自の世界を築き上げたミニマリストたち。現代日本の装幀文化の水脈を、幅広く掘り起こした注目の書。
目次
1 編集者の仕事―「不易のかたち」が語りかけるもの
2 詩人の仕事―「詩画一致」が紡ぐ感覚のひらめき
3 版画家の仕事―印刷との親和にたつ堅固で密度あるイメージ
4 画家の仕事―偏見を打ち破るイメージの魅惑と思想の定着
5 イラストレーターの仕事―問われる装画と書物空間との関係性
6 「幻の装幀家」の仕事―創造性の裾野の広がりを示すプロフェッショナリズム
7 著者自装の仕事―動機の強さがうむ意表外の着想
8 杉浦イズム咀嚼の仕事―影響・感化から深めた独自の世界への道筋
9 ミニマリストの仕事―抑制された手法で造本の「原型」を見すえる潔さ
10 現代の旗手の仕事―飽和状態を砕く可能性への果敢な挑戦
著者等紹介
臼田捷治[ウスダショウジ]
1943年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集の仕事に従事し、雑誌『デザイン』(美術出版社)編集長などをつとめる。現在、出版編集と、文字文化・グラフィックデザインの分野の執筆活動に携わる
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
57
カラー写真が極端に少ないのは残念ですが、山本容子、横尾忠則、和田誠、宇野亜喜良、ミルキィ・イソベ、清原悦志、祖父江慎、中島英樹など有名な装丁家のこだわりの話が出ています。2013/10/12
アメヲトコ
4
2004年刊(初出2000~02年連載)で10数年ぶりに再読。戦後の装幀の名作を、編集者・詩人・版画家・画家・イラストレーター・著者・デザイナーと担い手別に数名ずつを取り上げて解説した一冊。本は中身だけ読めればいいのではなく、やはり物としての存在感は大事です。改めて読み返すと、画家の仕事として挙げられている村上善男さんの仕事がとても上質。2019/01/28
sou
2
電子書籍が伸びている今だからこそ、物としての本の意義を考えたくなり、手に取りました。 読後、部屋にある本の装幀をじっくり確認したくなる、そんな本です。 本の中の世界を表すために、表のイラストだけではなく、カバーの下、タイトルの字体、本自体の素材、文章の組み方などなど、ここまでこだわっているのかと思うことばかり。 一種の美術品の域にまで達している本も。 新書なので1人1人の分量は少なめですが、全体をざっと一望するには適しているのでしょう。2017/02/24
りん
2
最近この本でも紹介された宇野亞喜良による装丁の今江祥智私家版「今江祥智コレクション」を目にした。もうその凝った装丁からは「他の本とはワケが違うぜ!」ということがぱっと見でも伝わってくる。赤のベッチーで施された表紙に深緑の箱に入っているところなんて、本というより宝物という感じだった。文面でもすごい凝った装丁をしていたんだってことは伝わったが、こんな本がこの世に存在するのかという驚きさえあった。その後読み返してみると、当時本の装丁という仕事はこれだけのことをしていたんだと実感させてくれました。2011/10/17
almondeyed
1
ミルキィ・イソベさんって何故か男性だとばかり思っていたのです。この本を読んではじめて女性だと知りました。2012/10/23