出版社内容情報
第二次世界大戦中、鋼船を失った日本は木船の増産を企図。個人の屋敷の巨木までを供出する「翼賛運動」が起こされる。木と木の船をも総動員する日本の戦争の知られざる実態!
内容説明
ガダルカナルの敗戦が決定的になった1943(昭和18)年2月、日本政府は国内で「軍需造船供木運動」を開始する。急速に進む鉄の不足を補い、木が戦争資材として浮上する。政府は鋼船に代え木造船を緊急増産するため、山林だけでなく平地の巨木・大木にも目をつけた。一斉に屋敷林・社寺林・並木・公園・海岸林の木々の伐採供出運動が展開される。一方国内や東南アジア各地では木造船工場が新設され、規格化・簡略化された「戦時標準型木造船」の大量生産が始まる。何十年、何百年、人々の暮らしと共にあった身近な木はこうして船になったが、果たしてどれだけ役に立ったか?―知られざる戦時の木の総動員体制と木造船建造計画。日本における樹木と人の関係史上まれに見る危機的局面を、中世史家がはじめて明るみに出す、前人未踏の歴史分野の開拓。
目次
はじめに それは一学生の卒業論文から始まった
第1部 供木・献木(太平洋戦争と「軍需造船供木運動」;供木・献木「魁」の大ケヤキ;「率先垂範」する天皇・大社寺;「巨木挙つてお召しに応じよう」;軍需造船供木運動の全国的動向;官製「国民運動」の理想と現実;メディア・文化人の動員)
第2部 木船(木船に賭ける日本;木船造船所の数と分布;木船造船所の視察と業界の提言;漫画家の『僕の木船見学』を読む;木船は活躍できたか)
第3部 木の終戦(伐採された木の行方;伐採を免れた巨木・大木)
おわりに 「木の事件史」を記憶する
著者等紹介
瀬田勝哉[セタカツヤ]
1942年生まれ。大阪府大阪市出身。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。武蔵大学名誉教授。専攻は京都中世史、木の社会史・文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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