平凡社選書
兼好法師の虚像―偽伝の近世史

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  • サイズ B6判/ページ数 316p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784582842265
  • NDC分類 914.45
  • Cコード C0091

内容説明

「徒然草は近世文学である」―近世初頭「古典」として発見された徒然草は、出版産業の興隆ともあいまって一大ブームとなり、おびただしい注釈書類を産んだ。そのなかで、中世には知られていなかった兼好の伝記資料が出現する。兼好と同時代の公家の日記の抜粋を称しながら、その実まったくの偽文であるその資料は、伊賀に発して何次かにわたって増殖、芭蕉とその一門のはたらきもあって広く流布し、これをもとにいくつもの兼好伝記が書かれた。そして、まるでこの偽文に仕組まれていた時限装置が作動したかのように、兼好のイメージは時を経て変転する。恋にも強い分け知りの法師、西行と並ぶまことしき隠者、江戸後期には、諜報謀略活動にいそしむ南朝の忠臣。江戸期の文芸・学芸思潮の変遷とともに、明治後半まで信じられていたこの偽伝と兼好像変転の顛末を活写する、気鋭の論考。

目次

序章 偽伝以前―二つのイメージ
第1章 『園太暦』偽文の誕生―伊賀と兼好
第2章 増殖する偽伝―「好色ノ法師」から「真しき隠者」へ
第3章 芭蕉と兼好伝―『更科紀行』と晩年の句
第4章 『園太暦』偽文と芭蕉―記念館本『薗太暦』追考
第5章 兼好と南朝―イメージの形成と『太平記秘伝理尽鈔』
第6章 南朝忠臣説の構造―土肥経平の思考回路
第7章 兼好の「ますらをごゝろ」―大国隆正の思想と趣向
終章 偽伝の終焉―江戸から明治へ
付論 兼好塚の文学―常楽寺蔵・近世兼好伝資料解題

著者等紹介

川平敏文[カワヒラトシフミ]
1969年。福岡県生まれ。九州大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。熊本県立大学文学部助教授。専攻、日本近世文学・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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bapaksejahtera

15
別に「吉田」兼好捏造説を副題とする本があるが本書とは異なる。徒然草作者兼好法師の所伝史料は極めて少ない。古くから兼好は歌人として評価が高かったが徒然草が多くの読者を獲得したのは江戸初期。時の隠遁者のブームと印刷技術の発展による。この時遁世者にも拘らず砕けた記述に溢れた同書からの類推や太平記高師直の顔世御前への付文代筆記事等から伊賀の有力者の娘への兼好の懸想譚が生じ、信長の伊賀征討で荒廃した伊賀国人に兼好の偽伝を生む由縁となる。これが近代に渉る兼好像変遷の発端である。一般書を超える難解な処が多いが良書だった2023/05/01

たぬき

0
室町から江戸にかけて、吉田兼好は伊賀に住んでいたという伝説2017/04/19

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