内容説明
明治の新メディア「新聞」、なかでも振り仮名付き口語体で「女子供」にわかりやすくを旨とした「小新聞」は、戯作者たちが筆を執った。木版から活版に乗りかえた彼らの腕は、とくに「雑報(おはなし)」欄(のちの三面記事)で縦横に揮われ、開化の読み物の目玉となり、お仲間の浮世絵師の挿絵もつけて、やがて「続き物」というジャンルをつくりあげる。諸紙こぞってこれに飛びつき好評を博すなか、ひとり『読売新聞』は無稽・狸褻に傾く続き物は断乎載せぬと上品の孤塁を守っていたが、明治10年代末、ある人の言によってついに掲載を決意、しかしそこにはひとつの工夫があった―。近代小説の最重要形態・新聞小説の誕生を、文化史の広い視野のなかにたどり、まったく新しい展望を拓く。
目次
第1章 活版の日刊新聞の登場
第2章 戯作者と戯作の文体
第3章 小新聞の雑報記事―挿絵の登場
第4章 雑報記事の連載
第5章 続き物の発生
第6章 続き物の定着と展開
第7章 新聞小説と坪内逍遙―自由民権思想の展開
第8章 坪内逍遙の小説観
終章 新聞小説―「小説」と「絵入り続き物」の融合