内容説明
さまざまな困難を抱える現代の教育。次々と生起する教育問題の根源を解く鍵は、〈近世〉にある。子どもの個性を尊重した寺子屋の机の並べ方、女訓書にみる女性の読み書き能力の高さ、日本中を呪縛する〈勉強〉の起源……。本書は、近世の教育状況のこうした実態と特徴を明らかにしつつ、さらに、貝原益軒の教育観の考察から江戸期の教育思想を捉え直し、藩校教師の置かれた立場から現代の〈教師〉の位置をも、逆に浮き彫りにする構成となっている。
目次
寺子屋では机をどう並べたか
近世の女子手習図を読む
「勉強」と賞罰論の時代
新儒学の日本的受容の教育史的展開―熊沢蕃山・貝原益軒の場合
貝原益軒の通俗書・教訓書出版活動と天道思想
貝原益軒の教育観―学習法的教育観
藩校教師の葛藤―19世紀前半の加賀藩明倫堂を主対象として
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鵜殿篤
1
30年前の本だが、問題関心という点で言えば古くなっていないというか、むしろ新しくなっている気もするのだった。というのは、本書の関心の中心は「主体的な学習」であり、「メリトクラシーの有効性」だからだ。 「主体的な学習」は、もちろん今時学習指導要領で最大のテーマとなっている。またメリトクラシーが機能しなくなっていることは、現在では佐藤学「学びからの逃走」などが指摘しているとおりだ。本書は「勉強時代の幕あけ」を扱ったわけだが、現代は逆に「勉強時代の幕おろし」の時代なのかもしれない。2019/05/02
tkm66
0
資料2001/12/31
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