内容説明
文字で〈読む〉ことばに慣れきっている私たちが忘れてしまった、〈語り〉のことばのちから―語りの文芸はどのようなことばから成っているか。語りのことばはどのようにはたらいて物語をつくるか。暗記した台本を読み上げるのとは違って、その場その場でことばを変える語りの方法。そこに、〈犬の鈴鷹の鈴轡の音がざざめいて〉という決り文句があざやかにはたらく。本書は文字で書き目で読むことばと口で語り耳で聞くことばの違い、語りの文芸の構造、聞き手も参加する語りの場の性格を明らかにし、その語り手たちの実態におよぶたんねんで先鋭的な追究である。
目次
1 語りの風景(犬の鈴鷹の鈴轡の音がざざめいて;説教とから傘;連歌と民衆のことば)
2 口語りの論(口語りの論;幸若舞曲;幸若舞の語り)
3 舞々・説経とき(近世の越前幸若家;舞々と火薬;語りの固有名詞・伝説の固有名詞)