出版社内容情報
『おくの細道』は百韻で構成されている。「表八句を柱にかけおく」とした序文の謎を、実証的に解き明かす意欲作。これまでの研究にはない、新しい芭蕉の姿が見えてくる。
目次
立証編(発端―「面八句を庵の柱に懸置」;句文百韻の検証結果;句文百韻を検証する作業―章段を区分するための客観的基準;句文百韻の内容―一覧表)
内容編(芭蕉が陸奥歌枕行脚を思い立った須磨での体験(『笈の小文』)
句文百韻の各折にはテーマがあった―『おくのほそ道』は芭蕉の学習記録でもある)
俳論編(「月さびよ」と芭蕉の「さび」そして「一家に遊女も寐たり萩と月」考―結論;不易流行;「しほり」(雅)と「かるみ」(俗)
『猿蓑』巻頭句の意義―試論)
著者等紹介
有本雄美[アリモトタケミ]
1938年、兵庫県生まれ。1962年神戸大学経済学部卒業後、大阪ガス株式会社に入社。副社長を務め、2006年に退社。2007年、関西大学文学部入学。2012年、同大学院文学研究科を修了。専門は日本近世文学、松尾芭蕉(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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trazom
108
「おくのほそ道」に、こんな読み方があったかと感嘆する。著者は、冒頭の「面八句を庵の柱に懸置」という言葉から、この作品が、連歌の伝統である「百韻」の形式を踏まえたもの(しかも、韻文と散文が美しく調和した「句文百韻」)ではと仮説を立てる。曾良本の芭蕉自身による朱筆を分析し、各折のテーマを見つけてゆく著者の作業が詳細に記述されているが、読み進むにつれて、その仮説の蓋然性が浮き彫りになり、恰も推理小説を追うような知的興奮に満たされる。大阪ガスの副社長を経て、69歳で文学研究者の道に入られた著者畢竟の集大成である。2023/12/13