出版社内容情報
内容説明
のちに国民的作家となった二人の知られざる美術記者としての葛藤の日々、対照的な美へのまなざしを追う。
目次
第1章 遅咲きの桜―須田国太郎のこと
第2章 一期一会と想像力の飛翔―井上靖を中心に(創造美術のスクープとその前後;惚れこみと物語化―ゴヤへの熱中;西城の旅―シルクロードにて)
第3章 狂気とかなしみへの共振―司馬遼太郎を中心に(「絵描きになろうとおもった」;驚きのその先へ―八大山人;狂気と「文学」―ゴッホと鴨居玲)
第4章 美術の先へ―それぞれのアプローチ(美を超えたもの―上村松園;生命の発光―三岸節子;陶とはなにか―井上靖と河井寛次郎、司馬遼太郎と八木一夫)
第5章 二人の宗教記者(宗教記者・井上靖;宗教記者・福田定一と司馬遼太郎;仏塔と書のことなど)
著者等紹介
ホンダ・アキノ[ホンダアキノ]
大阪府生まれ。奈良女子大学卒業後、京都大学大学院で美学美術史を学ぶ。修士課程を修了し新聞社に入社。支局記者を経て出版社へ。雑誌やムック、書籍の編集に長年携わったのちフリーとなる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
106
「著者の名前も知らず、タイトルに惹かれて手にしたら大正解だった!」というのが本好きにとって最高の幸せ。本書はそんな一冊。ともに美術・宗教担当の新聞記者として社会に出た井上靖さんと司馬遼太郎さん。美に対する鋭い感性と愛情を持つ二人のエピソードの数々が、たまらなく魅力的。井上さんが愛する富岡鉄斎、河井寛次郎、ゴヤ。司馬さん推しの八大山人、八木一夫、須田剋太、ゴッホ。二人で共有する須田国太郎、上村松園、三岸節子。自らも美学美術史を修められた著者の深い考察が、作家と美術との関わりを見事に浮き彫りにする。いい本だ。2024/02/23
kawa
31
両氏をリスペクトしている。井上氏も司馬氏と同じ新聞記者時代に美術・宗教担当だったことは知らなかった。「しろばんば」等の純情無垢な微笑ましくも共感高い青春小説から、後に文学界の重鎮リーダーとして活躍する秘密が知れた思い。本書は、お二人の美術・宗教論説を通して膨大な秀逸作品群を分析するなどの野心的試み。例えば、司馬先生のゴッホの絵についての「人物が働く~心と動作と悲しみで~そんな精神を絵画した~(それは)稀有な文学にほかならなかった」はとても刺激的。取上げられる芸術家の一覧はコメントで。2024/02/12
ますずし
5
司馬遼太郎ファンとしては読まねばと読み始めたが、なかなか手ごわいぞ。もう少し美術を知っていないと、この作品の本当の面白さには、到達できないかもしれない。しかし、エッセンスは感じられたので良しとします。2024/02/20
ui
3
「井上が感電したように憑かれたのはゴヤのなした仕事であり、司馬が惹かれたのはゴッホという人間だった」(114)と著者は分析する。処世的でありながらも本質を突く井上、独自のフレームで物事を定義する司馬のそれぞれに通ずる部分が多少なりともあるのではなかろうかと読んだ。2024/10/15
コンタミ
2
◎。本屋で見かけて。著者は美術ライター。司馬遼太郎は大好きだし、井上靖も何冊か読んで割と好きだったが、2人とも小説家になる前は新聞社で美術記者をしていたとは知らなかった。美術に対するスタンスの違いや、画家とのエピソードが知れて、非常に楽しく読めた。とくに2人が行った敦煌旅行の話が面白い。情報量が多いのも良い。多作な2人の著書(+インタビュー、エッセイ)を掘ったうえで書かれている。リサーチが大変そう。膨大な資料があるので散らかりそうなものだが、うまく1冊にまとめられているのもすごい。力のある著者。2024/05/10