出版社内容情報
女性による女性のための雑誌『青鞜』の歩みを、平塚らいてうや伊藤野枝らの生き方とともに、また100年後に著者自身が営んだ地域雑誌『谷根千』を引合いにしながら丹念に追った意欲作。
内容説明
雑誌の立ち上げに高揚したのも束の間、集まらない原稿、五色の酒や吉原登楼の波紋、マスコミのバッシング…明治・大正を駆け抜けた平塚らいてう等同人たちの群像を、おなじ千駄木で地域雑誌『谷根千』を運営した著者が描く。
目次
第1章 五人の若い女が集まって雑誌をつくること
第2章 いよいよ船出のとき
第3章 広告から見えてくる地域性
第4章 尾竹紅吉、あるいは後記の読み方
第5章 伊藤野枝の登場
第6章 『青鞜』の巣鴨時代
第7章 保持研の帰郷
第8章 『青鞜』の終焉
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
1954年、東京生まれ。作家。早稲田大学卒業後、84年に地元で地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊、終刊の2009年まで編集人を務めた。著書に『鴎外の坂』(文藝春秋、芸術選奨文部大臣賞)、『「即興詩人」のイタリア』(新潮社、JTB紀行文学大賞)など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
32
雨の土曜日朝に読了。日本史の授業でも出てくる雑誌「青鞜」と平塚らいてう。この辺の歴史にあまり詳しくなく手にしてみた。時代は大正デモクラシー前夜、社会の好奇の目に晒されつつも逞しく雑誌の編集に携わる女性たち。とはいえ、さすがに明治から大正の時代の中で新しい女性の象徴となった人達。伊藤野枝に尾竹紅吉と激しい女性たちの活躍ぶりは読んでてハラハラする事請け合い。とにかく恋に仕事に明治の女は強かった!当時の広告で世相が窺い知れたのもよかったです。2017/05/13
星落秋風五丈原
31
平塚らいてうのあまりにも有名な言葉で知られる雑誌をめぐるあれこれと森さんの雑誌作りを比較して描く。らいてうと恋仲になってからの尾崎紅吉の無頼べーと駄々洩れの編集後記に爆笑。誰も読んでなかったのか。2022/01/23
kokada_jnet
30
『青鞜』の最年少メンバー・不思議ちゃんな尾竹紅吉が最高です。また、森さんの谷根千についての自分語りが面白い。こういう風に「青鞜と比較する」という形にしたおかげで、溜まっていた色々な愚痴や苦労話が「公の場」で語れたのです。2016/04/22
きいち
24
なんてわくわくする、いい加減で自分勝手で壮大な失敗だろう。校正も流通も超いい加減ながら、らいてうも伊藤野枝も、みなこの雑誌を作ることによってつながり、思いを形にしていき、自己を勝ちとっていく、それ自体が挑戦。そう、私たちには、失敗する権利があるのだ。◇森が自分たちの雑誌作りと重ねあわせる語りが効果的。時に突き放しあきれ返り、時に同情し、そのおかげで『青鞜』もらいてうも神格化・物語化されず、関わった一人ひとりに光があたっていく。それぞれの戦い。◇それにしても、自他ともに個人情報ダダ流し。すごい時代だよなあ。2014/02/27
Ohbananaco
7
女性が集まって雑誌をつくることの大変さ、面白さというのは昔も今も変わらないんだなぁと感じました。編集後記が一番面白かったり、明確なコンセプトの有無と雑誌の衰退度が密接に関わってたり、とかく資金繰りが大変だったり、編集作業というのはほとんどが雑務だったり・・・。雑誌作りを少しかじっていたので、あちこちで頷きながら読みました。当時の「新しい女」たちのエネルギーにも圧倒されました。面白かったです。2013/10/02