出版社内容情報
24歳で夭折した「なつ」こと樋口一葉が、『にごりえ』『たけくらべ』を生み出した“奇跡の14カ月”を、綿密な史料踏査とフィクションを交えて描く一大絵巻。今までにない一葉像の誕生。
内容説明
終の栖となる本郷丸山福山町の「水の上の家」に移り住む前後の日記から、樋口一葉として“奇跡の日々”を迎える夏子の心模様を追う、書き下ろし長編。
著者等紹介
領家高子[リョウケタカコ]
1956年東京向島生まれ。作家。東京外国語大学ドイツ語学科中退。1995年『夜光盃』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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detu
23
明治期の文壇の勢力は複雑。引用文が文語なので難解、誉めているのか貶しているのか。それはともかく、一葉女史の生活と内面に深く切り込んでの推論は興味深い。『たけくらべ』は私小説とも言えるのか。にごりえ、大つごもり、十三夜と習作を続発した奇跡の十四ヶ月。絶賛羨望と妬み。実らぬ思いは作品、日記、手紙に込められた。絶えずお金に追われ窮々の日々ではあったが訪れる文人墨客とは丁寧な応接。24歳、夭逝。惜しまれるばかり。なんとも切ない。時代背景、人間関係を踏まえ改めて作品類を読んでみたい。味わいが深まるか。良書でした。2021/02/23
鳩羽
3
一葉/夏子が最後に過ごした水の上の家、そこから始まる作家樋口一葉のまぼろしのようにもの悲しく、流れ去る水の清らかな日々を、一葉の日記や作品、文壇の争い、世相などから丹念に閉じ込めようとする。力作だと思う。文体が読みにくく、近代日本文学の知識が足りないので難しくも感じたが、藤村、透谷などとの作品を通しての作者による解釈にはわくわくさせられる。また、一葉のはっきりと露わにしない/できない感情が、印象的な文章で突きつけられる。切なく、苦しく、同調して笑うしかない。とても読み応えのある作品だった。2013/06/05
takao
0
ふむ2017/12/19
竹香庵
0
(本当は半分しか読めてないんだけど、次に読む本があったのでひとまずここまで。)じつにいい本だった。これを読むために、わざわざ先に川上未映子訳の『たけくらべ』を読んでからにしたのだ。正直、むしろこっちの方がいい。それはきっと私の読解力が至らぬせいで、川上訳のせいではないと思う。まさか『たけくらべ』が、こんな中坊の淡い恋心の物語とは知らなかったから。鷗外・露伴・緑雨の絶賛激賞がいまいち分からず。でもそれは私が原文の雅文体の表現を読んでいないからだと思う。教科書の『舞姫』にはその昔感動した。原文で読んでみたい。2016/06/29
ハルト
0
読了:○ 樋口一葉中心に据えての明治文壇あれやこれ。論文小説のような。清らか。2013/05/29