出版社内容情報
愛猫・トラーとの日々を描いた『遊興一匹 迷い猫あずかってます』全文収録。加えて短篇「タマや」「兎」、さまざまな「猫」のはなし、民画の虎からセンダックの犬まで、金井ワールドの動物たちも続々登場。推薦文=江國香織、小川洋子
内容説明
批評とユーモアが全方位に炸裂する、当代一のことばの使い手・金井美恵子。半世紀にわたる膨大なエッセイの中から、猫をテーマに作家自身がセレクトし、新たに編んだベスト・コレクション集!
目次
1 遊興一匹迷い猫あずかってます(トラ!トラ!トラ!;銀座の猫、家の猫;小さな虎さん ほか)
2 小説(タマや;永遠の恋人;兎)
3 そのほかの動物(兎の夢;動物と物語;電子の迷路のおちこぼれについて ほか)
4 トラー、その他(猫のような…;鵞鳥の夢、猫の夢;詠まれた猫 ほか)
巻末書きおろしエッセイ 夢と夢の中の動物たち、ペットたち、そして、書かれた動物と夢
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年、高崎市生まれ。小説家。1967年、19歳の時、「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。その後、小説、エッセイ、評論など、刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花文学賞受賞)、『タマや』(女流文学賞受賞)ほか多数。30冊近い数々のエッセイ集を刊行している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
18
猫、そのほかの動物の、そして何よりもトラーちゃんの、息づかいやにおい、鳴き声やたてる物音、動きや毛並みや温かさや、気配、体つきや雰囲気や姿形の、よさについて、如何に素晴らしく、よいものであるか、或いはその〈ため息の出るような、満ちたりきった充足感〉、を語る金井美恵子の言葉ほど、魅惑的なものはないように思う。自らとこの上なく近しく、親密な関係にあるものを書く時の、あの。金井美恵子の豊かで繊細な言葉を読むことほど、楽しく幸福なことはないように思う。その広がりと連なりと膨らみの、自在さ、尽きる事のなさ。2021/03/05
つーさま
12
つい先日『遊興一匹…』を読んだばかりで、読もうかどうか迷ったのだけれど、あの可愛らしいトラーの姿が頭に浮かび、最初から読むことにした。やはりトラーの一挙手一投足には本当癒される。それだけに晩年のトラーの姿は痛々しく、読んでいるこちらも苦しくなってくる。しかし、金井さんは最後の最後まで感傷に浸ることなく、一匹の猫の死を描く。そこには胸を打つ美しい喪失感がひそやかに宿る。それは同時に長年時を共にした愛猫=家族への最上級の餞別だと思う。2013/09/08
あ げ こ
7
猫を書く時。言葉のすべてが猫への愛(無償の)と、猫の可愛さを象るもの。それを表すもの。よさだけでなく、猫と共にある事の苦労であるとか、不自由さであるとかを挙げていてもそう。可愛いと直接言っていなくてもそう。容姿、動作、慣習。何て事のない事。猫を象る言葉の何もかもがそのまま猫の可愛さと、猫への愛を象っているもの。猫を象る=猫愛を象る。とんでもない強靭さを持つ惚気。猫と言う生き物そのものを愛しているのだなあ、とわかる。言葉より愛がだだ漏れ、と言うよりかは言葉自体が愛の塊、と言った感じであると今回改めて。2016/09/22
mikeneko
6
前半の「遊興一匹…」は、猫飼いにとってバイブルとも言える作品でした。これだけ読んでも良かったくらい。80年代後半に著者が飼っていた猫「トラー」はくまのプーさんの虎の名前。(ティガーじゃなかったんだ。)この頃はまだ、ネットもFacebookもなかったので、この本を読んだ人たちはきっと「うちの猫だけじゃなかったんだ!」と思ったはず。ただ完全室内飼いをすることが少なかった時代だけに、毎日のように半死状態の鳥や蛇を持ち帰られると思うと、きっと私ならこの時代に猫は飼えない!後半収録の「猫に話しかけないで…」は最高!2013/09/10
geromichi
3
目白は近かったものですから、学生の頃たまにフラフラすることもありまして、トラーに遭遇したことなんてあったかもしれない。でもあの街はなんだか猫がいっぱいいたような気がしますね。2016/07/15