出版社内容情報
第1エッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』から始まる、社会/メディアへの一貫した辛口批評が大炸裂。高校時代の「美術手帖」への幻の投稿原稿も発掘・収録。痛烈で優雅、抱腹絶倒の巻! インタビュー=上野昂志/解説=中島京子
内容説明
批評とユーモアが全方位に炸裂する、当代一のことばの使い手・金井美恵子。半世紀にわたる膨大なエッセイの中から、批評をテーマに作家自身がセレクトし、新たに編んだベスト・コレクション集!
目次
一九六七‐一九七三(処女作の頃;若者たちは無言のノンを言う;書くことの始まりにむかって ほか)
一九七四‐一九八五(西江雅之;無垢のグロテスク;いたましいグラス ほか)
一九八六‐一九九二(売れようと売れまいとおおきなお世話だ;澁澤さんのこと;踊りの魂 ほか)
一九九三‐二〇一二(電子小説の未来;「読み飛ばす」という技術;『女ざかり』丸谷才一 ほか)
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
1947年、高崎市生まれ。小説家。1967年、19歳の時、「愛の生活」が太宰治賞候補作となり、作家デビュー。翌年、現代詩手帖賞受賞。その後、小説、エッセイ、評論など、刺激的で旺盛な執筆活動を続ける。小説に『プラトン的恋愛』(泉鏡花文学賞受賞)、『タマや』(女流文学賞受賞)ほか多数。30冊近い数々のエッセイ集を刊行している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
コットン
76
1964年からのエッセイでさすがに金井さんはデビュー当時から金井さんそのものなのを実感する。『売れようと売れまいと大きなお世話だ』『こまわり君がすきっ!!の巻』『澁澤さんのこと』『大岡さんのこと』『クーダラナイ、クーダラナイのココロ!!』など面白いものが多く、滝田さんのことにも触れ『『寺島町奇譚』の頃』で寺島町奇譚でのカットが映画的との指摘があり、自分が好きだった寺島町奇譚の魅力が映画的だからなんだ!と今になって納得した。2021/01/11
踊る猫
23
エンターテイメント精神を感じる。といっても、読者に媚びる精神ではない。著者の立ち位置はいつだって掴みどころがない。愚直に「批評」しているわけではないし、かといって「随筆」で逃げているわけでもない。迂回しながら、息の長い文章で華麗に蝶のように舞い、蜂のように刺す。しなやかでありつつ、実はストレートでもある。私は男なので、この著者の文章に関してはいつも愚鈍な読者として接してきたのだけれど、今回もそれは変わらなかった。このセンスを学ばねばと思いつつ、しかし学んで猿真似で書いてしまうとたちまち陳腐になるのが困り物2021/05/28
阿部義彦
20
平凡社で出したエッセイコレクション全4巻の内の1冊目、これによって金井美恵子の文章の面白さに目覚めました。石川淳が好きで、19歳の時に彼が審査員を勤めていた太宰治賞に応募して、下読みをしていた筑摩書房の吉岡実に注目され何かと世話をやかれる。20歳で現代詩手帖賞を受賞。その前に16歳の時に偽名を使い、美術手帖に投稿して何回か載っており、その時の紙面がボーナストラックとして、巻末に載ってます。高校生にして美術手帖の読者だったとは、自分との共通性を感じたりして。海燕に書いたエッセイはリアルタイムで読んでました。2025/04/28
つーさま
17
「私は近頃、誰しも人は少年から大人になる一期間、大人よりも老成する時があるのではないかと考へるやうになった」これは本書に引用されている坂口安吾の言葉だが、私には二十歳そこそこの金井さんが大人よりも老成した作家に見える。一見だらだら書いているようで、恐ろしくも見事に物事の本質をつく。その鋭さ、美しさはもちろん、若さゆえの物憂げで危ういところにうっとりしてしまい、困ったことに本を閉じても興奮が鎮まることはなく、なかなか眠れなかった。そんな日には布団の中で横になるなんてもったいない。夜になっても遊びつづけろ。2013/09/05
あ げ こ
9
金井美恵子はいつの時代も鋭くて繊細で豊かで刺激的だ。その都度ひりつく。笑う。慄く。喜ぶ。楽しむ。感嘆する。息を吐く。目が眩む。立ち上って来るのだ。浮かび上がって来るのだ。快も不快も、美しさも醜悪さも、すべて。だからこそ思い知る。嫌と言う程に、多くを。嬉しくなる程に。如何に馬鹿げているか。如何に鬱陶しくて、面倒で、可笑しくて、愚かしくて、不毛で、うんざりするか。或いは如何に美しいか。如何に柔らかくて、しなやかで、甘美で、魅惑的で、艶かしくて、気持ちよくて、たまらないか。その都度思い知る。強く、驚く程に強く。2019/11/14