内容説明
世界遺産と並ぶ文化保護制度「無形文化遺産」―。洗練された能や歌舞伎はむしろ例外。学芸会と見紛う寒村のチャンバラ劇、荒廃した祖国を逃れ、異郷で伝える父祖代々の旋律、政治に利用される紛争地域の祭り…グローバル化と時に対立し、時に結託して生き続ける、伝統文化のさまざまな姿。
目次
序章 カラオケ○、アメフト×
第1章 それぞれの姿を訪ねて
第2章 生きている遺産
第3章 継承の現場から
第4章 空間を守る
第5章 無形文化遺産保護条約の誕生
第6章 迷走する委員会
第7章 コミュニティーの幻想
第8章 再生への道
著者等紹介
国末憲人[クニスエノリト]
1963年岡山県生まれ。朝日新聞「GLOBE」副編集長。パリ支局長などを経て現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
16
世界遺産の基本は顕著な普遍的価値(12頁)。無形文化遺産保護条約は、 コミュニティーや集団、場合によっては個人が、自らの文化遺産の一部であると認めるような、慣習、表象、表現、知識、技術と、これらに関係する用具、物品、作品、文化的空間(26頁)。指笛言語に、スペインの地中海岸の灌漑法廷は変わり種(32頁)。この条約は、人権や協調性に反するものは認めない方針(35頁)。当事者からすれば、文化はコミュニティーと不可分の存在(61頁)。 2014/09/16
qoop
3
何となく日本の〈人間国宝〉のようなモノ…と思っていたのだが、本書を読んでそれが誤解だと気付かされた。グローバル化の波に翻弄される各国の文化遺産の実態、選考方法を巡る政治的混乱と対立の根深さ、諸問題を見据えた今後の展望など、この一冊で問題を概観できると感じた。2012/12/04
ちゃば
2
生きている遺産とはなんぞや?と副題を読んで手に取った一冊。読み終えて改めて文化の奥深さを知りました。コミュニティーとともにある無形文化は、常に形を変えるのですから、それを「遺産」と呼んでいいのかも分かりません。アイヌ民族について少しは勉強した身として、文化の難しさを痛感しました。良書。2012/12/18
さなぎ
1
手に取る直接のきっかけとなったのはガシカーラ展。TBSの世界遺産スペイン編を鑑賞した際にエルチェの神秘劇に触れ、その歌唱力の高さに驚いたのだが、その背景をこの本で知ることが出来た。映画『プリピャチ』を見たことがあったため、示唆に富む本に映った。ナターシャ・グジーのバンドゥーラの響きに聞き入りつつ、内容を反芻したい。2013/04/02
Book shelf
0
朝日新聞「GROBE」副編集長の国末氏の著書。つまりジャーナリストからみた無形文化遺産の姿を描いた内容。 著者は世界各地の無形文化遺産を訪ね歩き、聞き取りなどをしていきます。時に車がいけないような断崖絶壁の道を歩いたりして取材をするのですが、このような取材の様子が描かれているのが、専門家の書いた本とは違う雰囲気を醸し出していて、面白い。ジャーナリストならではの視点で無形文化遺産のもつ問題点や悩ましいところが鋭く指摘されています。2014/05/08
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