内容説明
随筆の名手が描く、ぞくりとする季節の情感。あたたかい涙が心をうるおす「幸田文の言葉」シリーズ4冊目。
目次
第1章 春(蜜柑の花まで;早春 ほか)
第2章 夏(植木市;夏ごろも ほか)
第3章 秋(九月のひと;秋ぐちに ほか)
第4章 冬(山茶花;雪 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
68
私が熱愛する作家のエッセイ集。季節がテーマ。あまり読んだことがない文章だと思ったら、単行本未収録のものが中心だった。私は幸田さんが好きで、一時期は朝から晩まで読みふけり、『おとうと』の冒頭の部分は暗唱できるほどだった。なぜそれほど惹きつけられるのだろうか。感覚が鋭く、物事の本質をくっきりと表現できるからだろう。腕時計の冷たさから秋が来たのを感じる取る感覚の鋭さは素晴らしい。私達の生活は平凡なことの積み重ねに過ぎない。それでもその平凡さの中に隠されている限りない美と喜びを幸田さん本は教えてくれる。2013/03/15
も
38
いま、こんなにも美しい言葉を紡ぐ随筆家って日本にいるのでしょうか。季節の移り変わりを集めた随筆集ですが、本当にちょっとしたことで季節の始まりや終わりを感じとって、それを美しい文章に仕立て上げています。お父様もたまーに登場されたりして。春の章の「花三題」がお気に入り。何度も読み返したくなります。2015/05/23
メタボン
36
☆☆☆☆ ところどころに出てくる古風な言葉がたおやかで美しい。季節を細やかな情緒で捉えて、流麗な文章で掬い取る。読んでいて清々しい。季節をこのようにとらえる感性が、果たして今の日本人にどれだけ残っているのだろうか。幸田文の文章から感じること、学ぶことは非常に大切だと思った。2018/09/28
あつひめ
25
言葉の美しさと優しさが季節の移ろいと供に紡がれている・・・と表現したくなる作品。今では幻となりそうな物の名前が綴られている。忘れちゃダメだよというように。大切な日本語を後世に受け継ぎたい・・・そんな想いのあふれる自然体の作品集。幸田さんの作品をもっと読んでみたい。2010/05/20
hitsuji023
13
人と人の間にある空気、季節の移り変わり、植物や虫などの気配。それらに対する観察力と表現力。この人にしか書けないエッセイだと思う。世の中の大きなニュースにばかり注目してしまいがちな生活を送っているけれど、このエッセイのようにもっと身近なことに注目することで等身大の自分を見ることができると思う。2023/01/14