内容説明
「批評の人間性」をはじめとする評論文のうちに、「五勺の酒」など小説の内奥に、また魯迅との対比をとおして、「全人間的営みに立つ」中野の批評精神の根本形姿をつかみだす。
目次
「青春武装」の行方―戦時下教員の経験と「五勺の酒」
「批評の人間性」―「文学的自由主義」とのたたかい
魯迅 瞿秋白 中野重治―“雑感”という社会時評
“農山漁村経済更生運動”と文学的言説―道徳的主体の行方
“下級官吏”という主人公―ゴーゴリとドストエフスキーそして「車善六」
“中野重治”という現在
批評の人間性ということ
酒と歴史教育―「五勺の酒」
戦時下町内会と小説「吉野さん」
わしは田舎者だ。桶を桶という。〔ほか〕
著者等紹介
林淑美[リンシュクミ]
1949年東京千代田区生まれ。立教大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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中野は論争とあった。荒正人は自分こそが他を導く小市民的インテリだ!に居直った点で、平野謙は<小林多喜二と火野葦平>を表裏一体と見ることで殺した者の罪を死んだ者に着せる東久邇宮の一億総懺悔論と相似る点で、小林秀雄は反論理性で国民を唆す「妾哲学」を弄した点で、島木健作は「生活の探究」における<わざとらしい>誇張表現を用いた点で批判を加え、芸術による政治的扇動を目指す蔵原には芸術に政治的価値はないと裁断。政治(天皇制)を人間的に批判する中野は石堂清倫から構改派グラムシを学び60年代に共産党を離党する。2018/04/09