内容説明
熊野灘の大海原の先は極楽浄土、巡礼の民が目指すご神体の山―隠国(こもりく)の伝説を新しい感性で甦らせた小説集。
著者等紹介
中上紀[ナカガミノリ]
1971年、東京生まれ。ハワイ大学芸術学部卒業。『彼女のプレンカ』(集英社)ですばる文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mocha
82
熊野に伝わる神話・伝説などを編んだもの。中上紀さんという人は気になりながらも初読み。もっとエキセントリックな文章かと思っていたら、意外と平易で読みやすい。どこまで伝承でどこから創作なのかはわからないが、プリミティブな物語の持つ力強さや『隠国』(こもりく)の奥深さが感じられた。螺旋プロジェクトと重なる所が多々あったのも興味深い。
みねたか@
19
紀州熊野を舞台にした短編集。時代設定は様々。全編に森、滝、山そして海に棲まう人知を超えたものとの関わりが描かれる。また性愛描写はないのだが、女性目線での欲情の描写が官能的だ。過去の記憶をなくした女の旅を描いた「餓鬼阿弥」、滝の化身と僧侶の逢瀬を描いた「渡海」、打算、欲望にまみれた人の生とそれを超えたものをえがいた「海神山神」が特に印象に残る。2017/06/03
daikishinkai
8
熊野を舞台にした、神話的世界が描かれているように思われた。とても興味深い短篇群でした。2017/11/27
藤月はな(灯れ松明の火)
8
安珍と清姫のその後の話や南方熊楠らしき人物が登場する話、トルコとの交友のきっかけとなった話など熊野にまつわる民話、神話、史実などを現代に甦らせた極上の物語。民俗学に興味のある人にもおすすめします。2009/09/18
yamakujira
7
南紀熊野を題材にした17編の掌編集。エルトゥール号や南方熊楠など実在の事件人物、役小角や髪長姫などの有名人物、小栗判官や安珍清姫など伝承説話、鬼ケ城や花の窟など名所旧跡、熊野にゆかりのある素材を使った物語は、古代あり現代あり、どれも幽玄な熊野を想起させて不思議な雰囲気を味わえるけれど、連載時に紙幅の制限があったのか、短すぎて余韻に乏しいのが残念だ。「異民族」や「女人高野」はふくらませたら面白そう。「花の舞 炎の海」は「RDG」を彷彿とさせるな。なるほど、作者は中上健次の娘さんなのかぁ。 (★★★☆☆)2017/10/03
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