内容説明
写真とテクストの結合により、アイデンティティにつきまとう“謎”を追いつづける女性「作家」、ソフィ・カル。ポール・オースターやエルヴェ・ギベールに連なる新しい「物語」3篇(『ヴェネツィア組曲』『尾行』『本当の話』)と、ジャン・ボードリヤールによるソフィ論を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tom
17
ソフィ・カルは「赤いモレスキンの女」の中で登場した写真家。調べてみると、ほとんどストーカー同然の不思議な行動をする人。興味を惹かれて図書館に注文した。面白い。最初に出てくるのは、パリでちょっとだけ顔を合わせた男をストーカーするためヴェネツィアに行ってしま話。2番目は、探偵に自分をストーカーさせる話。3番目は、結婚相手にまつわるモノローグっぽい写真エッセイ。奇妙としか言えない写真家生活だけど、奇妙に後味を引く写真と文章が現われる。モレスキンの女がこの本を楽しんでいたのかと思うと、ちょっと嬉しくもなる。2021/06/14
凛
11
少し昔、顔を知らない人とデートをした。それがデートと呼べるかはとても怪しい。ネットで知り合い意気投合して小規模な街(町田である)で遊ぶ約束をした。条件は、①10-17時②決して会おうとしない事③行動を逐一メールで報告する。どこどこのベンチの裏にポケットティッシュを置いといた、だのヴィレバンのあのおもちゃで遊んだ(Re;あたしもそれで遊んだー!)だの、そういうデートである。感覚的にあれに近いものを感じる本だった。コトバニデキナイ。探偵に自分を尾行させる話が好き。「わたしはこの私立探偵Xの人生に入り込んだ。」2013/08/25
ankowakoshian11
5
映画『二重生活(原作は小池真理子の小説/未読)』で引用されていた小説。見知らぬ他人を尾行することが楽しくなり習慣化していた著者の、ある男をパリからヴェネツィアに追いかけ2週間尾行した記録から再構築した物語と、写真と短いテキストで構成される10の断片的な私的な事柄を語る物語の2編。面白く一気に読み進めてしまった。読んでる間につきまとう感覚を明確に分析し言語化してくれている論考『プリーズフォローミー』が更に補完するうえで興味深い。他人を尾行するというインモラルな愉しみを味わいたくて試してみそうになる怖い😂2023/09/14
MIHO
5
撮る側と撮られる側は、パラレルワールド。2022/02/05
UNI/るるるるん
4
“私は、私を尾行する” 写真とテキストの結合。本棚にさせるアート。他者を尾行し、他者から尾行されることで、ソフィ・カルは "あの“ ソフィ・カルになる。2021/03/30