内容説明
香港の陥落が、ひとつの恋を成就させた。被占領下の「上海」と「香港」を舞台にくりひろげられる一大ラブ・ストーリー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はと
16
訳者あとがきによれば、張愛玲は、李鴻章の曾孫に当たり、名門の家庭の出身である。しかし、母は、婚家と折り合いが悪く、張愛玲が幼い頃に家を出て洋行しており、家庭環境には必ずしも恵まれなかった。この小説には、中国の古い名門家庭のどろどろした内実が存分に描かれており、そういう暗くてかび臭い世界に張愛玲がさぞかしうんざりしていたのだろうと思わせられた。女同士の嫉妬、駆け引き、経済的安定を求める女性達。それでも、そんな中にもやっぱり恋もあるし、愛もあるのよね。2014/06/04
Sumichika3
9
本書も持っているけれど、訳としては上田さんの訳で読了。張愛玲の評価は近年は上海はじめ中国でも高いものがあるそうで。訳を通じてではあるけれど、感覚的な体験に華麗巧緻な表現を与えていく彼女の文章にはひきこまれるものがある。清朝末期の名族の血を享けた血筋。不幸な父娘関係。英語をものし、作家として名をなした若き日。晩年は厭人癖が甚だしくロスのアパートで孤独に亡くなったという。古典への造詣も深い彼女の文業と生涯には興味深いものを感じる。
fonfon
5
張愛玲から私が受け取るものは、熟した文明の重石からはみださずにはおれない、女が原初から放たずに持つ官能のほとばしる飛沫だ。映画を先にみて感動し原作を探したのだけど、セリフもほとんど忠実に再現されていることが判明。ひとつの文明が、あらゆる価値観が崩れ落ちていった1940年代の上海、香港を舞台に、すでに女盛りを過ぎ、ひっそりと没落屋敷の奥で退屈な日々の繰り返しに忍従していた出戻り女性が、「結婚は長期の売春」と斜めに構えるプレイボーイを相手に堂々と駆け引きに応じる。見事。2010/12/21
asukaclaesnagatosuki
3
本書も持っているけれど、訳としては上田さんの訳で読了。張愛玲の評価は近年は上海はじめ中国でも高いものがあるそうで。訳を通じてではあるけれど、感覚的な体験に華麗巧緻な表現を与えていく彼女の文章にはひきこまれるものがある。清朝末期の名族の血を享けた血筋。不幸な父娘関係。英語をものし、作家として名をなした若き日。晩年は厭人癖が甚だしくロスのアパートで孤独に亡くなったという。古典への造詣も深い彼女の文業と生涯には興味深いものを感じる。2011/11/24
Mana
2
商家から名士の家に嫁ぐも馴染めなかった女性が夫の死後箍が外れたようになってしまう「金鎖記」、中年夫婦の一日といった感じの「留情」、離婚して実家に帰ってきた婦人と、英国帰りのプレイボーイの虚実を交えた恋の駆け引きを描く「傾城の恋」の三編を収録。「傾城の恋」の白流蘇は、兄弟や義理の姉妹たちに軽んじられる中で精一杯できることをやって前を向いていこうとする姿に好感。逆に「金鎖記」の七巧は、もう少しなんとかならなかったのかと思ってしまう。夫が死んで遺産を確保した後、もっとしっかりできれば…2018/05/04