内容説明
天道は是なのか非なのか。世界の真相,歴史の過程とはいったい何であるのか,この問いこそ『史記』において追求されるモティーフであった。中国の歴史意識の本質とその趨勢をヨーロッパ学の常識に対する懐疑から出発して,中国思想の基本をなす「道」の観念に関連させて考察した「天道は是か非か」などの諸篇,宗教色ゆたかな中世社会の形成を新たな共同体創出をめざした宗教的反体制運動に,あるいは中世の精神史と社会史の関係を衆生済度に邁進した南岳慧思の中世的人間像にさぐった諸篇,さらに豪族共同体論によって中国の中世を理解する鍵とした諸篇。これらの一篇一篇は,いま歴史に社会に関心を寄せる人びとにとって,真にポレミクで刺激的なエセーとなるであろう。
目次
司馬遷の歴史観
司馬遷とヘロドドス
天道は是か非か
中国人の歴史意識
マスペロの道教理解について
道教の神々―いかにしてこれと交感するか(H・マスペロ)
道教と季節―中国人の季節感
中国前期の異端運動―道教系反体制運動を中心に
中国的新仏教形成へのエネルギー―南岳慧思の場合
六朝貴族社会と中国中世史
六朝貴族制
中国中世史研究における立場と方法
重田氏の六朝封建制論批判について