出版社内容情報
王国維の師・羅振玉は幅広い学殖を備え、晩年は日本が建国した満洲国の要職に就いた。特異で複雑な学者の唯一の自伝。中国と日本を行き来して、深く交流した記録三篇を付す。
内容説明
羅振玉は幅広い学殖を備え、辛亥革命期には日本に亡命、晩年は日本が建国した満洲国の要職に就いた。特異で複雑な学者の唯一の自伝。日中を行き来して深く交流した記録三篇を付す。
目次
集蓼編(出生から科挙受験まで;上海から武漢へ;二か月の日本滞在;蘇州での教育;北京での役人生活;京都での亡命生活;天津での日日;旅順での晩年)
扶桑両月記
扶桑再遊記
五十日夢痕録
著者等紹介
深澤一幸[フカザワカズユキ]
1949年京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。元大阪大学大学院言語文化研究科教授。専攻、中国言語文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さとうしん
13
羅振玉の自伝、旅日記など四編を収める。自伝あたる「集蓼編」は、羅振玉の官歴や家族のことが中心。若い頃は農学の研究に従事していたことや早くから藤田豊八や王国維と交遊していたことなどがわかる。文物・考古関係は山東・安陽・洛陽での旅日記「五十日夢痕録」の方が詳しい。来日した際の「扶桑両月記」「扶桑西遊記」は、当時の日本の諸制度、特に教育制度について細かく記録しており面白い。巻末の解説も羅振玉による王国維の著作盗作説の真偽など、興味深い話題が見える。 2022/09/13
電羊齋
6
羅振玉の自伝「集蓼編」その他三編を収録。自伝「集蓼編」には羅振玉の経歴、交友関係、彼自身の晩年の思いが綴られる。個人的には内閣大庫の清朝史料の保存に関する記述、日中両国の近代史・学術史の重要人物が多数登場する交友関係に興味を引かれた。日本視察記「扶桑両月記」・「扶桑再遊記」では明治日本の諸制度、特に教育制度についての彼の見聞・見解が記されており面白かった。旅日記「五十日夢痕録」では民国時代の文物の状況が記されている。巻末の解説も羅振玉という人物の複雑な側面、彼への評価の変遷など注目すべき話題が多い。2022/09/19