内容説明
王位を継ぐべきラーマを、父王は継母の懇請で森に追放する。親子・夫婦・兄弟の感情が交差する中、毅然と法に従うラーマの崇高な姿を説く本書白眉の第2巻『アヨーディヤー都城の巻』の日本語初の全訳。
著者等紹介
中村了昭[ナカムラリョウショウ]
1927年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程印度哲学専攻修了。文学博士。鹿児島国際大学名誉教授。専攻は、インド古代・中古の文化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
62
本巻では、異母弟の母妃の姦計によりラーマ王子が14年森へ追放されることになる顛末が語られます。問題の異母弟を含め王子たちは、法(自己の義務)をわきまえ、年長者を敬い、徳高く親切で自制が効き、クシャトリヤ(王侯・武士階級)の勇壮さを持つ人物で、彼らの対話、法と利に精通した家臣たちの妃への諫言などを通して、古代インドの理想の人間像や君主像が丹念に描かれ、その美にたっぷり浸りました。また、運命と戦わずに受け入れることを美徳とする態度からも古代インドの美学、心性が窺われるよう。ラーマの森での生活が語られて次巻へ。2022/11/17
NAO
59
立太子する直前、第三王妃の奸計で国を追放されてしまうことになったラーマ。邪心を持つのはこの第三王妃と彼女をそそのかした侍女だけで、泣く泣くラーマを追放しなければならなくなった王も、王位を譲られることになったバラタ王子も、ラーマの追放に衝撃を受け、苦しみ、第三王妃に激しい怒りと憎しみを向けるが、あまりにも勧善懲悪過ぎる感も。個人的には、王位をあくまで拒んだバラタ王子よりも、ラーマとともに森に入ったラクシュマナ王子の方が好み。2018/02/03
roughfractus02
6
太陽神であり世界維持を司どるヴィシュヌの化身として生まれた主人公は、大地から生まれた女性シーターと結ばれた。太陽と大地は世界に恵みをもたらすという象徴性を担いつつ、物語は太陽が空を移動して地平線に沈み、また登る運動を英雄の冒険譚になぞり始める。第二王妃の侍女の奸計による王位の剥奪を受け入れる主人公は森に隠遁し、第二王妃の王子も王位につかずに主人公を待つ。が、森が闇を象徴する羅刹の王の妹の誘いを断ったために闇の王との戦いの雰囲気に包まれると、主人公である太陽と大地である妻の別れが迫っていると読者は予感する。2022/09/22
スズコ(梵我一如、一なる生命)
3
冗長とも言える文体に慣れてきた第二巻。これを口述で伝えてきた叙事詩の世界を思うと、たおやかで、朗々とした調べが聞こえてきそうで、プチ・古代インド旅行の気分。話としてはあまり進展がありませんが、父母との別れの場面など盛り上がりもあり、特に無神論者との議論は興味深かった。宮廷の愛憎劇を漂わせつつも、守るべき倫理の法や価値観なども説かれており、大変興味深い。非の打ち所がないが、父の名誉のため全てを捨てて森に入るラーマ。でも、私はそんな彼に従順に付き従い、世話をする弟のラクシュマナに脱帽です。2014/02/20
christinayan01
1
悪女に対して「あなたが幸せになることは私は一切できない。何故なら、あなたを幸せにすることは他の人々を不幸にすることだからだ。」の一言が心に残る。現代でもホントそれって思う。 50~150頁が修行。ラーマが森に行くと決心するまで延々とラーマを褒めちぎる件が延々続く。ここを耐えれば森に入り人との出会い等がテンポよく進行する。2017/09/07