内容説明
内陸アジアの遊牧民キルギスの文化と社会、歴史から生まれた結晶を日本で初めて翻訳。長じて大王となるナマスの出生から破天荒な少年時代を語って、草原の物語を鮮やかに伝える。
目次
第1章 不思議な夢
第2章 勇士誕生
第3章 オシュプル老のもとでマナスを鍛練
第4章 カルマクの乱暴者どもを制裁
第5章 アルタイのカルマク勢を撃退
第6章 エセン・ハーンの密偵団を制裁
第7章 ネズカラ討伐
第8章 十一人の密偵団に仕置き
第9章 オルクン川の戦い
第10章 ハーンに推戴
著者等紹介
若松寛[ワカマツヒロシ]
1937年神奈川県生。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現、京都学園大学人間文化学部教授。専攻はモンゴル史
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感想・レビュー
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syaori
49
マナスとはキルギスの英雄で、また特別な語り手が伝えてきたその物語のこと。彼が生まれたのはキルギス人がカルマク(オイラート)人やクィタイのハーンに服属していた時代。「むごい仕打ちをうけても」「我慢するしかない」という父の言葉にマナスは肯かない。彼は言う「人はどうせ死ぬんだ、名誉のために死のうよ!」 物語は敵対する民族との争いやマナスとその仲間たちの活躍をリズミカルに語り、残酷で生命力に満ちたマナスと共に草原を馬で疾走してゆくような爽快さ。幾度かの争いの後、彼の父を首領に戴き、団結が固まったところで次巻へ。2019/04/12
ああああ
5
キルギス人にとっての自分たちの世界、キルギス人にとっての「私たち」という認識は、このあたりなのかな~、という風に何となく想像した。「彼はAさんの頭の上で蝶になった」(Aさんに同情を寄せた)的な見慣れない表現が新鮮。なぜそういう表現に至ったのだろう。2019/09/07
Oltmk
1
キルギスの英雄叙事詩「マナス」の主人公マナスの少年時代を描いた書籍で、生命力と躍動感を感じる文章と台詞によってマナスの世界に住む遊牧民たちの世界観と価値観などが浮かび上がってきており、弓や剣だけではなく銃と大砲や魔法を武器にして戦う世界を魅力的に描いている。中央アジア特有の言葉や、作中に登場する幻想動物などの固有名詞も出てくるが巻末に訳者による注釈も行われているためそれが何なのかを知る事が出来る。また、訳者によるマナス解説もこの作品の理解を深めるために必須。2020/06/25
あんのん
0
ボードゲームのマンカラの一類型である「トグス・コルゴル」に触れている、おそらく最古の文献。2021/02/05