内容説明
桃太郎、かちかち山、花咲爺など、明治お伽噺の巨人・小波が書き直した昔話24篇。後世に決定的影響を与えた本編に加え、付録の創作童話、坪内逍遙らの序・唱歌の全て、挿絵多数を収録。
著者等紹介
上田信道[ウエダノブミチ]
1953年大阪市生れ。大阪教育大学大学院修士課程修了。現在、大阪国際児童文学館主任専門員。専攻、日本児童文学史
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感想・レビュー
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かんちゃん
19
巌谷小波は、それまで口承文学だった昔話を活字に置き換えた功労者だ。但し、昔話の単なる記録ではなく、小波独自の児童文学に昇華したと評すべきだろう。書かれたのは、折しも日清戦争に向けて国民が高揚していた時期だ。ゆえに桃太郎も一寸法師も猿蟹合戦も浦島太郎も、いずれも愛国主義的で国威発揚の色彩に脚色されている。庶民の暮らしの中で受け継がれてきた昔話は元々日常の道徳規範を幼な子に説いて聞かせるためのものだったはずで、時代と共に変化してきたに違いない。本書も小波の生きた時代を映す鏡だと思うと、また面白い。2015/12/02