出版社内容情報
御典医の家に生まれた著者は,父の許に出入りした洋学者,福沢諭吉,神田孝平,箕作秋坪らの若き日の姿を思いだしながら,その言動を語る。維新前夜の生活と時代の変遷をみごとに伝える回想録。
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感想・レビュー
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きみたけ
54
著者は、1855年江戸生まれ、桂川甫周次女で今泉利春夫人の今泉みね。江戸三百年の花の舞台となった江戸での暮らし振りから、その後の辛い世渡りまで、老女が語る昔話をまとめた一冊。年中行事や芝居見物、福沢諭吉ら洋学者の思い出から、明治維新の衝撃とその後の「おちぶれのひいさま」としての苦労まで、将軍家御典医の家に生まれた娘の数奇な運命をたどります。江戸における蘭学医は珍しいだけでなく、世界情勢を知り得る立場であり、日本の立ち位置を心得ていたとの記述に興味が湧きました。2024/12/23
みかん。
5
徳川家に仕えた御典医の娘が晩年に書き残したもの。西郷隆盛さまに関する記載もありますね。2023/10/22
のんき
3
蘭医であり御殿医であった桂川甫周の娘が語る幕末維新期の回想録。江戸を生きた人が語る隅田川の情景は夢のように遠く儚く美しく、どの話も面白い中ひときわ輝いて心に残った。2009/06/22
Tatsuhiko
2
桂川家という徳川将軍お付きのオランダ医学者の家系に生まれ、幕末から明治維新期を幼い頃に経験した今泉みねさんによる口述記。この本はどちらかと言えば江戸時代を美化し明治以降を貶めているが、お嬢様として「名ごりの夢」を見た江戸に著者がそうした追憶を馳せるのは無理からぬことかもしれない。著者の目を通して描かれるかつての隅田川、屋形船から降りてくる芸者、夏の花火、秋の月見、芝居小屋、なんと情趣を誘うことだろう!桂川家に出入りしていた進取の学者たちの描写もまた、美しいヴェールを通して見る幻想絵巻のようなのだ。2015/11/07
r
2
福沢諭吉など桂川家に出入りした著名人の逸話が秀逸。化学者・宇都宮三郎の逸話が面白かった。