出版社内容情報
「文豪怪異小品集」シリーズ第13弾! 日本の宇宙文学の祖であり、三島由紀夫を驚嘆させた少年愛文学の先駆者・足穂の膨大な作品群から、妖しい名作、怪作を精選!
内容説明
たとえどんなお化けが現われようと、決してたじろぐには当らないのである―。宇宙文学の大いなる始祖にして、三島由紀夫を驚嘆させた少年愛文学の先駆者でもある、昭和文学の燦爛たる流れ星「コメット・タルホ」が遺した膨大な作品群から怪奇幻想の名に値する名作を初めて集大成!文豪怪異小品集シリーズ、第十三弾。
著者等紹介
稲垣足穂[イナガキタルホ]
1900年、大阪市生まれ。関西学院卒業後、佐藤春夫に師事。上京し1923年に『一千一秒物語』を出版。雑誌「ゲエ・ギムギガム・プルルル・ギムゲム」「文藝時代」「虚無思想」の同人となり、江戸川乱歩と交流を深める。一時文壇から遠ざかるが、戦後は精力的に作品を発表、三島由紀夫から高く評価される。『少年愛の美学』で第1回日本文学大賞を受賞。1977年没
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学文学部卒業。アンソロジスト、文芸評論家。1982年から「幻想文学」、2004年から「幽」の編集長を歴任。著書に『遠野物語と怪談の時代』(角川選書、第64回日本推理作家協会賞受賞)、児童書の企画監修も手がけ、ますます活躍の場を広げている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
59
タルホというとまず宇宙的郷愁や少年愛、ファンタジーを思い浮かべ、怪談には縁遠い印象を受ける。本書はそんなタルホの著作の中から怪談を選び出した一冊。とはいえ冒頭の幽霊屋敷物を除いては純粋な怪談は少ない感じ。あとは当然のように稲生物怪録関連もあり、こちらは巻の半数近くを占めている。「懐かしの七月」も「~退散仕る」も、この愛の物語は好きで何度も読み返したが「荒譚」は初読なので収録されていてありがたい。あと幽霊屋敷での友人が発狂したというエピソード、この前読んだ衣巻省三「ポオの館」と共通しているのではなかろうか。2024/10/08
藤月はな(灯れ松明の火)
56
褌一丁で煙草を蒸かす足穂先生の腹に「稲生物怪録」の一説が描かれている表紙からしてもう、最高過ぎる。怪異と言ってもおどろおどろしいものではなく、不気味ながらもあっけらかんとしている。初めは幽霊らしく、不気味に恐ろしく、出たのに言っている言葉と出る条件から呆気に取られる「友人の実見譚」。幽霊となった理由を聞くと中々、悲劇的なのにこの条件下が恐怖を中和するという化学反応に正直、驚いています(笑)そして『稲生物怪録』シリーズは相変わらず、豪胆さ故に終盤に一番、苦手な蚯蚓を引き合わされてしまう平太郎少年に合掌2024/10/05
ハルト
7
読了:◎ 化け物譚と、ファンタジックなお話と、幻想文学的お話に、肝の座った稲生平太郎少年が合う怪異譚の、四種類の稲垣足穂が見られる。化け物譚てはおどろおどろしい怪談を。ファンタジックな作品では夢のような不可思議さを。幻想文学チックなお話では月の夜の霧に包まれた世界のような。稲生譚ではお化け版少年活劇のような愉しさがあった。足穂の見る世界を望遠鏡で覗き込んたかのような、怪奇の星々が光っていた。青空でなく夜空の似合う作品集だった。2024/10/12
ムーミンママ
5
SFに物怪譚 ファンタジーと幅広い。少し難しかったけど楽しめた。2024/12/10
迦陵頻之急
2
稲垣足穂の描く怪奇には情緒的なねちっこさがない。日常の軋轢と関わることなく、ひたすら別の天地に遊ぶ感がある。人によっては足穂をマイナー・ポエットと断じるだろうし、あるいはポップカルチャーと評価する人もいるだろう。その点で、「稲生物怪録」の、因果因縁とは全く無縁のあっけらかんとした怪異への共感は納得できる。江戸時代の記録を読んだ時の草双紙や絵巻のような感覚が、現代語で再話されると、まるでライダーに乗って次々にアトラクションを見るような感覚となる。2024/07/17
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