出版社内容情報
王党派貴族を祖父にもつ青年マリユス。社会主義に感化され恵まれた身分を捨てた彼は、公園で毎日出会う未知の少女コゼットに惹かれていく。運命の大転機となる出会い。(全5巻)
内容説明
王党派の祖父に育てられた青年マリユスだが、皇帝から男爵位を受けた父の真実を知り、深く煩悶したすえに、決然と家を出てしまう。孤高の清貧生活を送っていたある日、ついに運命の人コゼットを見初めることに。いっぽう、皮肉な巡り合せによってジャン・ヴァルジャン父娘の正体を見破ったテナルディエがまたもやふたりを陥れる。一触即発の危機を見守るマリユスだが…。
著者等紹介
ユゴー,ヴィクトール[ユゴー,ヴィクトール] [Hugo,Victor]
1802‐85。フランス19世紀を代表する詩人・作家。16歳で詩壇にデビュー、1830年劇作『エルナニ』の成功でロマン派の総帥になり、やがて政治活動をおこなうが、51年ナポレオン3世のクーデターに反対、70年まで19年間ガンジー島などに亡命。帰国後、85年に死去、共和国政府によって国葬が営まれた
西永良成[ニシナガヨシナリ]
1944年富山県生まれ。東京外国語大学名誉教授。専門はフランス文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
42
主人公が変わった気持ち悪さで、男女を描くというのは安易だと読み進める。しかしマリユスはパズルのピースであり、テナルディエが登場する後半から俄然、面白くなる。マリユスは視点や主人公ではなく第三者の審級だった。登場人物が隣室で行われていることを覗くという設定が、単に客観描写で描かれるよりも読者の緊張感を高める効果を生んでいる。ヴァルジャンを「ルブラン氏」と表現したのはマリユスのナラティブだが、マリユスの立場から審級を構成し、読者が知っていることとのズレによって謎を生み出す。「ジョンドレット」がテナルディエと名2023/09/05
みつ
29
この巻は「マリウス」。大ブルジョワを祖父に持つ青年マリウスは、ワーテルローの戦いでテナルディエなる者が父の命を救ったと知る。祖父の元を出た彼は、公園で初老の人物と共にいる少女を見初める。この辺りで二人が誰であるか読み手(である自分)は見当がつくが、巻の最後までその名前で呼ばれることはない。娘二人と極貧の生活を送る隣人のもとを慈善家が訪れ、彼の正体を知った隣人が悪巧みを働かせる・・というあたりで彼らの正体も読者にわかるというしつらえは、緊迫感を高める。ここにジャヴェールまで登場する終わり近くは圧巻の一語。2024/11/13
朝乃湿原
12
「les misérables」という書名の意味が、この三巻にてついに明確に浮かび上がる。序盤のパリの浮浪児問題、そして「パトロン•ミネット」というパリ最大の悪党集団を取り上げ、社会の闇を映し出す。マリユスのように、品位を保った貧乏暮らしをできる人間は滅多にいない。不運な者は恥知らずな者となり、物質的にも精神的にも「貧しい人々(レ•ミゼラブル)」に成り下がってゆく。この人々には光が必要だとユゴーは言う。光は科学、文学、芸術、教育から生まれる。この光を彼らに照らし暖めてなければならないと。私は、2025/05/17
うぃっくす
9
大きな舞台なはずなのに人間関係が狭いな。テナルディエが落ちるところまで落ちてた。マリユスが極限状態で父をとるか愛する女をとるか、って悩むところ私もはらはらしちゃった。パリの昼と夜、って感じで面白かったな。続きを早く読まないと…2023/12/21
読人
2
1830年頃の仏・パリの風俗や政治事情が難関。やたら固有名詞が多いので、同時代の仏人意外は読者層としてみていなかったのか、それとも世界の中心である仏のことはみんな知っているはずと思っていたのか。あげくは自分の若い頃をモデルとする人物を主要キャラとして登場させる。八篇にはいってやっとストーリーが進展したと思ったら、急展開で先が気になり息つく暇もなく読み進めることになる。ちょっと偶然がすぎるところはあるが、おもしろく読めた。2023/09/09