出版社内容情報
岩波文庫改版以後でも50刷以上を数える、ロマン主義文学、いやフランス文学に燦然と輝く金字塔の新訳決定版。全5冊で贈る新定番。
内容説明
極貧のさなか、たった一片のパンを盗んだがため十九年ものあいだ獄に繋がれねばならなかった主人公ジャン・ヴァルジャン。出獄後の世の厳しさのなか、唯一彼に深い慈悲をほどこす「正しい人」ミリエル司教。改心しマドレーヌ市長に変貌した主人公を執拗に怪しみ追いつづけるジャヴェール警部。ただ一度の「純愛」から悲惨な短い生を終える哀れなファンチーヌ。そして、残された娘コゼット。
著者等紹介
ユゴー,ヴィクトール[ユゴー,ヴィクトール] [Hugo,Victor]
1802‐85。フランス19世紀を代表する詩人・作家。16歳で詩壇にデビュー、1830年劇作『エルナニ』の成功でロマン派の総帥になり、やがて政治活動をおこなうが、51年ナポレオン3世のクーデターに反対、70年まで19年間ガンジー島などに亡命。主要作の詩集『懲罰詩集』『静観詩集』や小説『レ・ミゼラブル』はこの時期に書かれた。帰国後、85年に死去、共和国政府によって国葬が営まれた
西永良成[ニシナガヨシナリ]
1944年富山県生まれ。東京外国語大学名誉教授。専門はフランス文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
42
ヴァルジャンが登場しない第1篇の100ページが苦痛でなかなか進まないのだが、第2篇と合わせると、ヴァルジャンを誰の視点から描いたら上手くいくか考えられた第1篇だったということが分かる。実際には社会に主人公が誰で誰に焦点が当たっているという視点が無いように、枕に別の視点をつくっておいて主要人物を登場させ、探偵小説のような謎を持たせて読者の興味を惹く構成は巧みだ。ダイジェストもミュージカルもアニメも観たことないので、読んでいくと有名な扉絵はヴァルジャンではなくて、コゼットだと分かる。ミリエル司教から改心の経験2023/08/26
みつ
26
きちんとした形で読むのは今回が初めて。冒頭百ページ以上がミリエル司祭の話に充てられその後ようやくジャン・ヴァルジャンが登場するという構成はいかにも大長篇らしい。有名な銀食器のくだりを経てマドレーヌ市長となるが、この間に少年の4スーを盗んだことが後々まで祟ることに。ここにファンチーヌの物語が差し挟まれ幼いコゼットの姿も。ファンチーヌの運命を読むと、黒岩涙香が最初の訳を刊行した二十世紀初頭、日本で多く世に出た「悲惨小説」(読んだのはいずれも短篇だが)との共通点を多く感じる。すぐに次巻を読まずにいられない。2024/11/09
朝乃湿原
16
革命余波の残る王政復古下のフランスは非常に無慈悲な世界であり、持たざる弱者は人権すら与えられなかった。西欧屈指のカトリック王国ながら、宗教が形骸化していく中で、信仰はどういうものなのかをユゴーは読者に訴える。それは華美で権威のある教えではない。弱者に寄り添い、罪人を許し、救済する。すなわちイエスの行為の体現こそが真の信仰となると語りかけてくるように私は感じた。実際に本書第一巻は、福音書のイエスの言葉•行動をなぞるように描かれているようにみえる。ミリエル司教がジャン•ヴァルジャンを許す場面は、「一粒の麦が地2025/04/15
うぃっくす
10
長編なのでなかなか手に取る機会がなかったけどやっと読み始めたら一巻で既にすごく面白かった。名作と呼ばれる作品はやっぱ読み応えがあって深い。パンを盗んで監獄入ったあともうまくやれなくて19年間も刑期が伸びて出所後も迫害されるジャンヴァルジャンに、男に騙され、強欲な夫婦から金をだましとられ続けて搾取され尽くしていくファンチーヌとか哀れだらけで世間知らずとか無知ってここまでの悪いことなの?と思う。ジャヴェールの正義や権力への執念も気になるところだけど何よりコゼットの行く末が気になる。2023/08/07
dokusyotyu24
6
学生時代に挫折した『レ・ミゼラブル 』の完訳版を再チャレンジ。手にしたのは平凡社ライブラリーから出ている新訳です。 主人公が全然出てこない冒頭に心が折れそうになるも、勢いで読み通す。2020/12/30
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- 和書
- 自然科学実験 〈1〉