出版社内容情報
明治期硬派男子の座右の書とされ、数々の著作にも登場する伝説の若衆物語。著者の「薩摩の婦女」を鍵に、誕生の背景に迫る解説を付す
鈴木 彰[スズキ アキラ]
翻訳
笠間 千浪[カサマ チナミ]
著・文・その他
内容説明
舞台は薩摩。戦国の世に出会った無双の美少年平田三五郎と青年武士吉田清家―義兄弟の契りを結び、忠義を尽くし、生死を共にした二人の物語は、男子のあるべき姿として長く読み継がれ、明治期には自由民権運動の機関誌に連載されるなど、一大ブームを巻き起こした。この伝説的物語の現代語訳に、著者とされる「西国薩摩の婦女」を鍵として、当時の女性の教育や職業、執筆の可能性に迫る解説を付す。
著者等紹介
鈴木彰[スズキアキラ]
立教大学文学部教授。早稲田大学大学院修了、博士(文学)。日本文学専攻
笠間千浪[カサマチナミ]
神奈川大学人間科学部教授。早稲田大学大学院修了、博士(人間科学)。社会学、ジェンダー研究専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鉄之助
217
明治の初期、書生の間で大人気だったといわれる元祖”BL”本の唯一の現代語版、ということで読んでみた。解説によれば「武士道をもって潤色せる男色道の一経典」と、大げさだったが、本文はさらっとしていて、ちょっと期待外れだった。天下の美少年・平田三五郎と、”白馬に乗った”剣豪・吉田清家が、あっけなく死んでしまい ? 共感できなかった。 2021/02/03
国士舘大学そっくりおじさん・寺
65
かねてから読んでみたいとは思っていたが、読めて感無量。男色物語というべきか衆道物語というべきか。決して破廉恥なポルノではないのが肝である。近世から読み継がれた男と男の恋物語。女性は全く登場しない。主人公・平田三五郎の短すぎる恋愛人生が薩摩島津の戦国史を背景に。興味深い内容である。恋っていいなとさえ思う。乃至政彦『戦国武将と男色』にも、薩摩の特殊性が語られていたが、少し理解ができた気分。書いたのは女性らしい事から、解説では近世の女性のリテラシーについて考察。これがまた好読物であった。プラトニックラブである。2018/06/27
HANA
58
美少年平田三五郎と武士吉田清家―義の恋を描く衆道物語。同性愛に義とか忠を持ち込むのは日本人っぽいというか江戸時代っぽいのだが、ストーリー自体は襲われる美少年を助ける高潔な武士や横恋慕した悪役による謀計、地上では成就せぬ恋と恋愛小説の王道に忠実である。明治には自由民権運動の機関誌に連載されたそうだけど、大正に書かれた若衆物いくつも読んだ事があるし、日本文化の伏流水じみた稚児物がいつまで受容されていたのかも気になる所。半分近くある解説も、物語の社会の需要から作者の考察等物語を理解するうえで必須でありました。2019/11/14
些か/isasaka
6
描写が少女漫画チックだな、と感じたのが私の素直な感想である。話自体もあっさりしたものだった。ただ、この本は解説を読むのがむしろメインなのかもしれない。 「西国薩摩の婦女」が書いたといわれる、明治に「一大ブームを巻き起こした」歴史小説。この情報を念頭に置いて読むと、不思議な気持ちになってくる。この記載の信憑性は?という考察、当時の薩摩・女性に対する考え方や教育についても、解説でこと細かに言及されており大変興味深い。2020/06/20
木倉兵馬
1
明治時代に流行したという、一種のBLのような内容の物語とその解説。舞台は戦国時代の薩摩、二人の武士が義兄弟となり遂には共に討ち死にする。二人が仲良くなるきっかけは、一方が強姦されそうになったところをもう一方が助け出したという、なんとも表現し難いもの。現代語訳のため読みやすいが、和歌・故事の引用、対句の多様などが見られるため、原文は音読してこその作品なのかもしれない。2022/06/14