出版社内容情報
日本海海戦で連合艦隊はバルチック艦隊に歴史的勝利を果たすが、ポーツマス条約の結果に国民の怒り爆発。日本のその後は? 完結編。
半藤 一利[ハンドウ カズトシ]
著・文・その他
内容説明
本書でやろうとしたのは、リアリズムに徹して日露戦争における諸事実を数多く示すこと、それが昭和日本にまでもたらした影響を考えるために何らかの役に立ち得る本をかくことであった―。血で血を洗う日露戦争は世界史に新局面を拓き、人々は“大和魂”を叫びはじめた。その行きつく先は?著者渾身の一大ノンフィクション、ついに完結。これを読まずして日本の現代を語ることなかれ!
目次
第12章 「血の日曜日」と黒溝台
第13章 奉天・乾坤一擲の大決戦
第14章 決戦前夜の両艦隊
第15章 「皇国の興廃この一戦にあり」
第16章 ポーツマス軍港と日比谷公園
エピローグ 万歳、万歳、万歳の渦
著者等紹介
半藤一利[ハンドウカズトシ]
1930年、東京生まれ。東京大学文学部卒業後、文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長、取締役などを経て作家。著書は『日本のいちばん長い日』『漱石先生ぞな、もし』(正続、新田次郎文学賞)、『ノモンハンの夏』(山本七平賞)など多数。『昭和史 1926‐1945』『昭和史 戦後篇 1945‐1989』(平凡社)で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。2015年、菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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てつのすけ
40
最終巻である本書は、陸軍は奉天会戦、海軍は日本海海戦である。本書を読み終えて思ったのは、よく戦争したなということだ。国力、軍の人員数、弾薬、書きあげればキリがないほど、日本はロシアに劣っていた。しかし、新聞というものほど愚かなものはないと、本書を読んであらためて感じた。2020/09/26
マリリン
24
「持たざる国」であることを改めて痛感。日露戦争は勝利に終わったが、内実は微妙だと感じた。特にポーツマスでの講和条約締結までの経緯は複雑な事情が見え隠れしている。報道を受け取る側はそこに潜む側面を読まなけらばならない事、そのためには多角的に物事を視る事の大切さも。この勝利が後の戦争に及ぼした影響は少なからずあるのではと思った。永井荷風が意外な形で登場している。夏目漱石の『坊ちゃん』は、再読したら感じ方が変わるのではと思った。2019/02/18
aponchan
22
ようやく読み終えた。総じて面白かった。司馬遼太郎氏の坂の上の雲からしか日露戦争のイメージが無かったので、半藤一利氏も書いているように、坂の上の雲のイメージが強い事を意識しつつの記述なので価値がある。たまたま、このタイミングでロシアがウクライナに侵攻した。何となく、人事では済まされない気がする。2022/02/27
skunk_c
15
奉天会戦に日本海海戦という「勝ち戦」(奉天会戦を勝ち戦と言っていいかは判断の分かれるところだが)の詳細と、ポーツマスの講和会議、そして日比谷焼き討ちに至る民衆の動きまで記述。「勝ち戦」なので筆も軽いが、氏の昭和を理解するための日露戦争史という視点はここでもしっかり生きている。明治の元勲達がいかに戦争を終わらせることに意を注いでいたか、それに対し昭和の対戦の政治家は?という点に加え、日露戦争後に新聞や教育で国民に真実(財政・物理的に戦争継続が困難だったこと)を教えるべきだったという司馬遼太郎の言葉が印象的。2016/10/05
ryuetto
5
非常にいい本でした。特に、ポーツマス講和会議の様子が丁寧に書かれているのは貴重だと思います。日本は、平和を得るためにロシアにかなりの部分で譲歩した。どうしてもそうせざるを得なかった。その部分がよく分かる分だけ、無知な一般大衆が理不尽な怒りを政治家や役人たちに向けてぶつけている、その状況にため息が出る。 そして、事実がだんだん捻じ曲げられて、美化されて、神話になっていく。それを人々が信じ込み、やがて、太平洋戦争に繋がっていく流れがよく見えて、非常に勉強になりました。これは、みんなが読むべき本だと思います。2023/06/02