出版社内容情報
SF、幽霊譚、不条理譚に詩――様々に綴られた理想と自由を求める人々の物語。解放感とユーモア、圧倒的自然描写溢れる新訳短編集。
内容説明
未完のSF、幽霊話、不条理譚、詩など、さまざまな形で綴られた、解放感とユーモア、圧倒的自然描写溢れる、ロレンスの知られざる傑作短編集。
著者等紹介
ロレンス,D.H.[ロレンス,D.H.] [Lawrence,David Herbert]
1885‐1930。20世紀を代表するイギリスの作家。イングランド中部地方ノッティンガム近郊の炭鉱町イーストウッドに、坑夫を父に生まれる。母は教養豊かな女性で、恋人のような存在になる。奨学金を得て、ノッティンガム大学教員養成課程に進学。1908年より、ロンドン近郊の小学校教員になる。1911年に、最初の長篇『白孔雀』を出版。1912年に、ドイツ人の人妻フリーダとイタリアへ出奔、専業作家に。翌1913年出版の三作目の自伝的長篇『息子と恋人』が高い評価を受けるが、それにつづく長篇『虹』が発禁になり、困窮。1928年に『チャタレー夫人の恋人』を自費出版。1930年に南仏ヴァンスで死去
武藤浩史[ムトウヒロシ]
1958年生まれ。英国ウォリック大学大学院博士課程英文学専攻(Ph.D.)。現在、慶應義塾大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cockroach's garten
22
図書館で借りた本。肉体と精神に関してロレンスの右に出る者は、おそらく居ないだろう。神秘的な物語で、あまりにも非現実的な描写に読者は想像するのが難しくなって参るだろう。しかし、ロレンスの描写力は卓越したもので、読んでいると我を忘れてその物語の中へ魂が飛び込んでしまう。正しくロレンスは芸術家で神秘家なのだ。解説の中にある『神秘家』という詩も必見。2017/01/21
やいっち
20
『息子と恋人』や特に『チャタレー夫人の恋人』ほどには洗練されていない。やや生硬な感も覚えた。ただ、最晩年の聖書論『黙示録』にも感じたことだが、ロレンスの関心のエッセンスが時に剥き出しになっているようで、興味深かった。どの作品も、ロレンスが亡くなる数年前から3年ほど前に書かれたもの。生硬と感じた私の感想は見当違いなのかもしれない。むしろ、幻視譚の形で彼の根底にある世界へ直截に対面しようという切迫感が自分にそう錯覚させたのかもしれない。2018/05/16
qoop
9
懐古調に記述されていた筈の故郷の風景が唐突に現在を越えて超未来へとスリップする〈人生の夢〉、ヒステリックで陰鬱な幽霊譚かと思いきや生の翼賛へと移行する〈喜びの幽霊〉、即物的な自然現象が一転して神意に見える〈メルクール山上の神メルクリウス〉、悲しみと笑いが瞬時に変化する〈微笑み〉など、突然に変容を遂げる世界の有様を書いた諸編。大胆な時間経過を写したという意味で、印象派と通じるような読み応え。2017/03/21
AR読書記録
5
幻視体質っていうのは、自分がそれを持たないので余計に気になる、惹かれてしまうものではある。(幻視・幻覚をテーマにした本では荒俣宏『パラノイア創造史』がもう、たまらなくどストライクで、御大の直筆サイン入り本は我が宝物であります。)しかし、裏表紙の紹介に「未完のSF、幽霊話、不条理譚、詩など」とあって、断然「SF」に興味を持ったのだけれど(そんなイメージなかったしな)、その作品「人生の夢」は、場の記憶が紡ぐ異界へと紛れ込んでしまった話って感じで、SFという印象とはなんか違う...がなんにせよ未完なのは惜しい。2015/11/04
ぺったらぺたら子
3
第何章の何節にこう記してあります。というような西洋的な世界の認識方法では理解できないような事を語るのがロレンスであり、読む前から解る人と解らない人を激しく選別しているのもロレンスであり、そういう意味ではロレンスの書く本は書物ではないのかもしれない。ロレンスを読むとは、ロレンスと魂を重ねることであり、同じ光を見、同じ音を聴き同じ熱を感じる事であり、小説を読みました、と言う事では無い。素晴らしい「喜びの幽霊」がまた読めるようになったのが嬉しい。2016/01/09