出版社内容情報
農業経済学者がロシア革命直後に描いた未来社会小説。スターリン下の全体主義社会への道行きとは正反対の小農経営に立つ1984年の世界。逆ユートピアの苦みが混じる。巻末論文=藤原辰史
内容説明
世界社会主義革命が勝利し、家庭の台所廃絶法によってブルジョワ社会の最後の毒素が一掃されんとする一九二一年から、主人公クレムニョフは一九八四年のモスクワにタイム・スリップする。そこは、さらに農民革命を経たあとの世界、小農経営に立脚した、実現したユートピアだった。素晴らしく進歩した技術、発展する文化…けれどもそれは、主人公を満足させる社会なのか?オーウェルとは別の、今こそ読まれるべき1984!
目次
社会主義の勝利とわが主人公アレクセイ・クレムニョフを読者各位にご紹介する章
あるソヴェト勤務員の火の出るような空想にゲルツェンがいかに影響を与えるかを語る章
クレムニョフがユートピア国に姿を現わし、ユートピア国のモスクワ女性と二十世紀絵画史をめぐってたのしい会話をするさまを描く章
第三章のつづき。章が長くならないために独立させた章
クレムニョフが一九八四年のモスクワを知るためにどうしても必要な長い章
アルハンゲリスコエでは、お茶うけにバニラ入りヴァトルーシカを八十年間忘れず作っていたことを確認するための章
家庭は家庭であり、永久に存続することを、そのことを望むすべての人に確信させる章
歴史についての章
若い女性読者はとばしてもかまわないが、共産党員にはどうしても読んでもらいたい章
ペーラヤ・コルピの定期市を描写し、恋愛の出てこない小説はからしをつけない脂身みたいなものだとする点で筆者がアナトール・フランスと見解を完全に同じくすることを明らかにする章〔ほか〕
著者等紹介
チャヤーノフ,アレクサンドル[チャヤーノフ,アレクサンドル] [Чаянов,А.В.]
1888‐1937。独自の小農経済理論により、ネオ・ナロードニキ派の理論的指導者として活躍した農業経済学者。農民経営の理論をまとめた『小農経済の原理』は、日本を含め、世界的に影響を与えた。第一次世界大戦下には農民の協同組合の組織化を推進、1917年ロシア革命がおこると土地改革連盟を組織して土地改革プログラムづくりにとつめ、その後も農業協同組合の中央機関の指導者として活躍した。スターリン体制下、1930年に逮捕され、4年後流刑に処され、さらに1937年再逮捕され、処刑された
和田春樹[ワダハルキ]
1938年、大阪生まれ。東京大学文学部卒業。専攻、ロシア・ソ連史。東京大学名誉教授
和田あき子[ワダアキコ]
1938年、岐阜県生まれ。早稲田大学大学院露文学専修博士課程修了。専攻、ソヴェト文学史、ロシア女性史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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