出版社内容情報
ベルクソンによるベルクソン哲学の方法論指南。哲学者自身の編んだ講演・論文集が、持続と直観というベルクソン哲学の根本を、彼以前の哲学との異同にも触れつつ納得させてくれる。
内容説明
ベルクソン哲学の方法を哲学者自身が集約的に説明。その核心を示す「序論」(=方法序説)二篇を書き下ろして編んだベルクソン哲学の方法論集。『精神のエネルギー』と対をなす絶好の入門書を的確な新訳で。
目次
1 序論(第一部)真理の成長、真なるものの遡行的運動
2 序論(第二部)問題の提起について
3 可能と現実
4 哲学的直観
5 変化の知覚
6 形而上学入門
7 クロード・ベルナールの哲学
8 ウィリアム・ジェームズのプラグマティズムについて―真理と実在
9 ラヴェッソンの生涯と業績
著者等紹介
ベルクソン,アンリ[ベルクソン,アンリ] [Bergson,Henri]
1859‐1941。19世紀末から20世紀前半のフランスを代表する哲学者。1927年、ノーベル文学賞受賞。日本では、夏目漱石、西田幾多郎、和辻哲郎、九鬼周造、小林秀雄らも愛読し、影響を受けた
原章二[ハラショウジ]
1946年、静岡県生まれ。パリ大学博士(哲学)。現在、早稲田大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かわうそ
41
我々がどんなに細部を予想したとしても必ず新しさに直面するとベルクソンはいいます。科学は予見をすることが仕事だから仕方ないにしても、私たちが感じている時間というものを考慮しきれていないと。そこが彼が考えている科学の限界の部分なんですね。 村上春樹の『1Q84』で青豆がいみじくも『歴史が人に示してくれる最も重要な命題は「当時、先のことは誰にもわかりませんでした」ということかもしれない。』(1Q84 book1 前編 12ページ)と語っていますがベルクソンが言いたいことがここにあらわれている気がします。2023/05/06
かわうそ
40
「科学は行動の補助手段」なんですね。よく、巷で文系は不必要という議論がよくなされます。それは科学がなぜ生み出されたかを理解していないが故に出る議論だと思います。いつだって科学から生み出された技術をどのように使うか、方向性を考えるのは人間の頭に他なりません。その点を忘れるから、文系は不必要だという馬鹿げた理屈が出ることになります。科学は所詮、分析から成り立っているのですからそれが完全性を伴うというのはあり得ない話だということも頭に入れていく必要があります。あくまでも分析は類似的思考です。2023/05/28
34
33
ベルクソンによると、あらゆる哲学者の仕事の根底にはなにかとてもシンプルな直観のようなものがあるという。それは「あまりに並外れて単純なためにその哲学者が言うことに決して成功しなかったもの」だと。ベルクソンの明晰さは、この直観に問いのかたちを与えることのうまさによって際立っている。たとえばベルクソンは「時間とは何か」と問うにあたって、「なぜすべては一挙に与えられないのか」という問いの立て方をする。時間はなにを遅延しているのだろうかと。ベルクソンの結論に同意できなくとも、問いの力強さは見紛いようがない。 2017/05/25
hakootoko
8
概念の配置換えや増築では何も深化しない。既製の言葉によって、二つに裁断されているが直観においては一つであり、言葉の上では一つに混在しているが直観においては別々である。直観に沿って言葉を再裁断し、ときに常套句を転倒することで、時間の止まった知性に記憶を侵入させ、振り子の揺れを増幅することで、動く時間へと回帰する。哲学者はたくさんの言葉を残すが、それをもたらしそれがもたらすのは、単純な一つの力であり、呼び声である。本書はベルクソンによるベルクソン入門というより哲学入門である。2022/10/10
またの名
8
ベルクソンの思考法が衝撃的に見事過ぎ(て冷静にまとめられない)。どんな哲学体系もその哲学者の単純なイマージュに還元されると言うように、本人の依拠する図式も非常に簡明(知性⇔直観、記号⇔イメージ、科学⇔哲学、量⇔質、製作⇔思考、固定・不動⇔変化・流れ)。思考の歴史が誤って提起してきた問題を切り捨てる反プラトン主義的態度やプラグマティズム的真理観はニーチェに劣らず後世にもたらしたものが大きいはず。ドゥルーズもベルクソンの忠実な弟子にしか見えなくなる不思議。芸術に関する記述が哲学の優越を前提していなくて惚れる。2013/06/22