平凡社ライブラリー
ドストエフスキーの創作の問題―付:より大胆に可能性を利用せよ

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  • サイズ 文庫判/ページ数 382p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784582767834
  • NDC分類 980.28
  • Cコード C0390

出版社内容情報

ドストエフスキー論の初版。筆を矯めざるを得なかった増補改訂版(『詩学の問題』)より率直で明確な対話論・ポリフォニー論が展開される。バフチン言語論の中心思想を把握できる待望の初訳!

内容説明

言葉はつねにすでに他者の言葉への応答としてある―独自の言語理論・文学論は、ドストエフスキー作品を場にポリフォニー論という結晶をもった。カーニヴァル論などを加えただけでなく、編集部の要求などにより変更され、『詩学の問題』と改題された増補改訂版ではなく、そのオリジナル版『創作の問題』こそ、バフチンの理論の核心がより率直に鮮明に語られる。待望の初訳。

目次

第1部 ドストエフスキーのポリフォニー小説―問題提起(ドストエフスキーの創作の基本的特徴と、批評文献におけるその解明;ドストエフスキーにおける主人公;ドストエフスキーにおけるイデー;ドストエフスキーの作品における冒険的プロットの機能)
第2部 ドストエフスキーにおける言葉―文体論の試み(散文の言葉の類型。ドストエフスキーにおける言葉;ドストエフスキーの中篇小説における主人公のモノローグ的言葉と語りの言葉;ドストエフスキーの長篇小説における主人公の言葉と語りの言葉;ドストエフスキーにおける対話)

著者等紹介

バフチン,ミハイル[バフチン,ミハイル] [Бахтин,М.М.]
1895‐1975。独自の言語理論に立脚した文学・文化研究によって、世界的に大きな影響を与えるロシアの思想家。1920年代から、講演会・講習会を通じて、いわゆるバフチン・グループが形成され、このサークル仲間の名義で言語学、哲学などに関する著作を発表、1929年には本人名義で『ドストエフスキーの創作の問題』を刊行、また1930年代には『小説の言葉』を含む一連の小説論を執筆、ラブレー研究にも着手し40年に論文を書き上げたが、それらの仕事は十分に価値を認められなかった

桑野隆[クワノタカシ]
1947年、徳島県生まれ。早稲田大学教育学部教授。専攻は、ロシア文化・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ころこ

38
『詩学』からカーニバル論を除いた第1章と第5章で構成されている。ヨーロッパのテクストや作者の死といったプロトコルの批評ではないので、なぜこんな抽象的な書き方なのか戸惑ったが、割り切って読めるところだけ読む。マンガ批評で引用をするよりも、キャラクター分析だと思えば似非ヨーロッパ同士の日本とロシアは案外近く、むしろ新しいともいえる。その点、精神分析の手法を用いる斎藤環が思い浮かぶが、オープンダイアローグでバフチンのポリフォニーに言及しているのは偶然なのか、それとも論理的な裏付けや文化的な背景があるのだろうか。2023/01/30

壱萬弐仟縁

7
重要箇所はゴシック太字。ポリフォニー(18頁)は、著者の用語でいくつもの異質な文体や語り方(narrative)が共存する状態(広辞苑)。ドストエフスキーも同様にポリフォニー小説の創造者という(19頁)。読者はこうした手法に翻弄されるだろうが、そうしたカオス的なものが魅力にもなっているのだろう。ドストエフスキーの作品は<イデオロギー小説>(51頁)とのこと。冒険小説は、人間の本性である自己保存、勝利欲、官能的愛のプロット(筋書き・構想)(134頁及び広辞苑)。機会があれば、ドストエフスキーの作品に挑む。2013/04/17

Pustota

6
『詩学』の前身となる作品。そちらを先に読んでいたが、紹介分にあるように『創作の問題』の方がより率直で鮮明なのかは、読み込まないとわからない気がする。こちらの方が論点が絞られている分読みやすい。バフチンのスタンスが分かる付録「より大胆に可能性を利用せよ」が興味深かった。2023/10/20

Bevel

6
ドストエフスキーの中編小説における主人公の内的対話は、他者への「呼びかけ」としてのモノローグとして見ることができる。他者とは、社会や文化そのものであり、語り手の主人公はその社会に対する抗議者として独白を続けることになる。他方、長編小説において、今度は抗議者/社会というセットとして定義される個人が複数存在し、それらの交錯、共鳴として物語が表現される(ポリフォニー)。個人の組合せ、つまりその内的対話の組合せは、文化の内側に潜む異質性を表現し、物語の上では「心に沁みいる言葉」を持ったムイシュキンを要請する。2013/07/28

有沢翔治@文芸同人誌配布中

4
ロシア・フォルマリズムのバフチンのポリフォニー論。ドストエフスキーの小説、特に『カラマーゾフの兄弟』の多元性な語りに注目して論じている。うーん、バフチンの問題意識もそこそこは理解できるし、当時の文芸評論が作者の生い立ちを調べたり、作者の言いたいこと一辺倒だった中、文体に注目したのはバフチンの新しさだったとは思う。思うんだけど……、みんなが評価するほどかな。2013/09/07

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