内容説明
ベルクソンが自ら編んだこの論文集は、この哲学者が展開した思考の核心にあるもの、持続、直観、生の躍動、等々のキー概念が指示しているものを、講演の語り言葉で、また限定された論題のもと、ふつうの言葉の、卓抜な比喩でもって、読み手の思考を喚起し導くように感知させてくれる。懇切な注でそのことを確認しつつ、的確で読みやすい新訳で読む、ベルクソンによるベルクソン入門。
目次
1 意識と生命
2 心と体
3 “生きている人のまぼろし”と“心霊研究”
4 夢
5 現在の記憶と誤った再認
6 知的努力
7 脳と思考―哲学的な錯覚
著者等紹介
ベルクソン,アンリ[ベルクソン,アンリ][Bergson,Henri]
1859‐1941。19世紀末から20世紀前半のフランスを代表する哲学者。1927年、ノーベル文学賞受賞
原章二[ハラショウジ]
1946年、静岡県生まれ。パリ大学博士(哲学)。現在、早稲田大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夜間飛行
75
《我々が事物を見る時に自分に与えているのは現実の枠の中にはめ込まれたこの一種の幻覚です》…認識とは、現実から得られる知覚の枠に、記憶内容が結びついたものらしい。その結びつきはもちろん偶然ではなく、ベルクソンは記憶内容が《待機》中なのだという。思うにこの《待機》とは、未来の《予期》とほとんど同義ではないか。例えば錯視体験で、存在しない線が見えてしまうのは、記憶内容の《待機》とも未来の《予期》ともいえそうだ。『失われた時』のマドレーヌ体験も、無意志的記憶であると同時に小説を書くという《予期》と考えれば面白い。2017/12/22
syaori
58
講演録とエッセイで構成され、優しい語り口。精神(≒意識)と脳の関係を語る部分が興味深かったです。意識とは「何よりも記憶」のことで、記憶は常に私たちと共にあるのですが、それが知覚されないのは脳が「現在の状況」に有用な記憶だけを呼び戻すから。その機能があるから人は前を向いて「果すべき行動に集中できる」。それは恐らく「創造」で、生命は「高い質の発明と努力を手に入れるために」「働いていると言わずにおれません」という人間の未来を信じる著者の言葉と、私たちを、生命を前に進ませる「躍動」の力がとても印象に残りました。2019/09/25
あっきー
18
✴3 最初に読むべき入門書らしいので正月休みに読もうとしたが歯がたたずリタイア、今回も解説本2冊を2回づつ読んで再チャレンジしたが目を通した程度の理解度だ、意識と記憶と脳の働きなど戦前に書かれているのに今の常識も覆すような考え方がある、この本を最新の脳科学で分かりやすく解説してくれる本を探している2020/02/26
しゅん
16
先に『物質と記憶』を苦労しながら読んでおいてよかった。この講演録と論文集のくだけた言葉使いが何に基づいているかわからなかったから。むしろ最初の「意識と生命」における進歩主義的な言葉にうんざりしてたと思う。ベルクソンにとって知覚は過去に蓄積された物質全体に広がっている(意識がそれを限定している)ものだから、その知覚の凝縮の仕方に進歩を見出すという筋も理解できるし、心霊研究会(!)での講演でテレパシーを肯定するのも知覚の突然の接続としてベルクソン的にあり得るで納得する。ちょくちょく再読しようと思う。2021/01/08
fseigojp
13
以前、渡辺哲夫 フロイトとベルクソン を読んだが、同じ無意識を扱っても対極的2019/07/01