内容説明
政治学と日本政治理想史の分野に立ち、戦後日本の思想をリードした丸山眞男。代表的な論考を集め、その思考の特徴と振幅を一望のもとにおさめる。いま、丸山眞男を読みなおすとは何か?その思考から受け継ぐべきものとは何か?編者による懇切な解説とともに、丸山の巨大な仕事に踏み入る最良の入口。
目次
国民主義の「前期的」形成
超国家主義の論理と心理
福沢諭吉の哲学―とくにその時事批判との関連
軍国支配者の精神形態
肉体文学から肉体政治まで
「三たび平和について」第一章・第二章
「現実」主義の陥穽―ある編輯者へ
戦争責任論の盲点
ある感想
日本の思想〔ほか〕
著者等紹介
丸山眞男[マルヤママサオ]
1914年生まれ。東京帝国大学法学部卒業。東京大学教授を務めた。1996年没。戦争中からその後の日本政治思想史の方向を決定づける論考を執筆する一方、敗戦後には日本の軍国主義・ファシズムを分析する一連の論文で一躍注目を浴び、以降その発言は大きな影響を与えた
杉田敦[スギタアツシ]
1959年生まれ。東京大学法学部卒業。現在、法政大学教授。専攻、政治理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
45
日本における戦争責任についての記述が多い。責任の所在のなさについては、日本人の特性としての欠点だと思う。さらに自らの被爆体験についても語っていらっしゃる。この体験が氏の戦争考察につながっているのは間違いないだろう。2015/09/29
逆丸カツハ
34
予想以上に重要なことを言っている人で驚いた。誤りも指摘されているところもあるだろうが、今に続く議論のベースになっているところが見受けられる。福沢諭吉にはあまり興味がなかったが、読んでみたいと思った。2024/06/12
白義
22
丸山を語る時誰もが引くような名論文ばかりで編まれている。それぞれの文章は分析の対象こそ違うものの、全てを通じて流れる通奏低音は一貫していて、社会の現状を動かしがたい自然と捉えてそれに居直る状況主義、日本の政治風土の「作為」の契機のなさを批判し、多元的な現実の中に精神の躍動を吹き込む近代精神と真のリアリズムを推奨している。その認識から生まれるメタ的な言論分析は現在も見事に該当する。特に「福沢諭吉の哲学」は福沢諭吉という思想家に仮託された丸山自身の理想像といっていいだろう2014/11/03
しゅん
15
今でも通用する鋭い議論ばかりで驚く。むしろ70年前から私達がどれほど進めたのか心もとなくなる。「現実を直視せよ」という言葉は現実の多面性と向き合っていない、とかほんとにそうだよな。政治的無関心も政治的判断である、というのも納得。平易な言葉で書かれた切れ味抜群の論理。反対に、相当量の思索が送り込まれたであろう複雑な議論もある。福沢諭吉から受け継いだ、絶対性を疑い相対的な判断を重視する思考は文体スタイルの幅広さからも読み取れる。ナチと日本軍の分析は特にすごい。正直、ここまで面白いとは思わなかった。2016/12/18
さきん
14
戦争責任は、海外に対するものよりも敗ける戦いへ突っ込んでいった日本社会に対して感じるべきだと思う。他国も日本に勝ちながら、国、地域を侵略された落ち度はある上、日本軍の残虐行為と対して変わらない行為も散見される。また、海外へ日本社会を代表して現政府が謝罪するにしても、相手国が形式だけでも良いから許容する態度を示さないといつまでも卑屈でよそよそしい関係を続けることになる。戦争やファシストは悪だと著者は断定しているが、共産主義や資本主義も行きすぎれば、多くの人が苦しむ点で、同じであり、断定する態度こそ2016/04/21
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