内容説明
甦る不思議な文筆家。何でもないもの、古びたものへの愛着。
目次
素白随筆遺珠(早春;研ぎ;憶い出―染谷進君を悼む;微恙;再び散文へ ほか)
日本文学の写実精神(はしがき;日本文学の写実精神;日本文学に於ける詩精神と散文精神の交流;歌物語以前の写実的短篇;古民謡の味 ほか)
著者等紹介
岩本素白[イワモトソハク]
1883年、東京生まれ。本名堅一。麻布中学を経て早稲田大学卒業。恩師江原素六が校長を務める麻布中学の教諭となる。のち早稲田大学文学部教授となり、随筆の講座を担当する。1961年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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月音
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主に戦中戦後の随筆と日本文学、特に随筆についての論文、講演録を収録。空襲ですべてを失った著者は、家族とともに信州の田舎町に仮の宿りを求める。貴重な蔵書、原稿も灰となり、紙とペンにすら不自由する日々に愚痴ひとつこぼさず、相変わらず杖を手にふらりと散歩に出てゆく。彼方には「わが心なぐさめかねつ」の古歌で名高い姨捨山。そこはかとない哀しみがたゆたう文章に、幾度かこの歌を口ずさむこともあっただろうと推察する。清少納言、卜部兼好の著作を都会人的特殊性の功罪から評した一文は鋭く、手厳しい。2022/12/04