内容説明
男子の普通選挙が実現した共和制下のフランスで、ルイ・ナポレオンのクーデタが成功し、しかも、この独裁権力が国民投票で圧倒的な支持を得たのはなぜか?この問いをめぐるマルクスの自由で饒舌な語り口は、つねにレヴィ=ストロースやE・サイードのような思想家たちのインスピレーションの源泉でもあった。
著者等紹介
マルクス,カール[マルクス,カール][Marx,Karl]
1818‐1883。ドイツの思想家、経済学者、革命家。F.エンゲルスとともに科学的社会主義の立場を創始した。資本の分析を通して、資本主義批判を展開。社会主義運動のために尽くした
植村邦彦[ウエムラクニヒコ]
1952年、愛知県生まれ。名古屋大学経済学部卒、一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。専門は、社会思想史。熊本大学を経て、関西大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たーぼー
60
大革命、帝政の瓦解という変動を経過し、複雑怪奇を増したフランス政治の中でも、とりわけマルクスが二代目ボナパルトに注視した理由は、民衆から独裁復活を啓蒙でなく迷信でもって騙し取った男の恐ろしさ、という点のほかに己の存在を独力で(時には有能な者に丸投げして)確かめ生きるべく要請された男の内的矛盾とマルクス自身の培った思想が何処かで共鳴し合う部分があったからではないか。マルクスが本書で表明した攻撃的姿勢はフランス階級闘争の構図のタネ明かしと共に現代政治批判に用いるに当たって凄まじい威力を発揮するものに違いない。2017/04/09
さきん
27
やっと読了。読み難いといったらありゃしない。まだトクヴィルの2月革命の方が読みやすかった。主観のアジ文だが、言いたいことはよくわかった。用は、ナポレオン三世は大衆に担ぎ上げられた俗物であるということ。さらにそのような状況を貴族層が自ら作ってしまったこと。しかし、皮肉なことにナポレオン三世の治世前半でフランスは大きく近代化を邁進し、普仏戦争まで社会が安定していく。2021/04/26
かふ
22
柄谷行人のあとがきだけでも読めば大体のことは理解出来ると思う。この本がわかりにくいのは当時のフランスの議会政治の党派関係や支持基盤が見えにくいからだった。マルクスの『資本論』はソ連が崩壊したあとにこそ有効なのだ。ただそれは希望としてではなく絶望的状況で。だから我々はナポレオンを求めてしまう。大衆の欲望がナポレオンを生み出すのだ。https://note.com/aoyadokari/n/nf5b00911f1912023/12/15
松本直哉
22
議会制民主主義が独裁者を生んでしまう皮肉。ヒトラーも、そしてナポレオンの甥であるということのほかに何の特徴もない凡庸なこの男も。メディアを活用したイメージ戦略で大衆の心を捉えれば、内容空疎な演説も大喝采を浴び、やがて流血のクーデタを可能にする。岸信介の孫であるというだけの男がメディアを買収してしようとしていることと重なる。議会制とか民主主義に根本的な欠陥があるとしか思えないな。難しいことはわからないけど。歴史は繰返す、二度目は茶番として。投票に行ってもむだなのだろうか2014/12/01
みねたか@
18
皮肉が効いて、ドラマチック。うねるような独特の文体で畳み掛けてくる。読み物としては面白い。ただ悲しいかな、歴史叙述としても、政治思想としても消化しきれず読んだ気がしない。最大の要因はもちろん知識の欠如。次に過去の思想という先入観があるからか?柄谷行人の解題でようやく、そーゆーことやったんか、とやや納得した次第2017/11/25