内容説明
和本に挟まれた一片の枯葉―。それは紙魚を防ぐものであるだけではなく、旧蔵者の溢れる蔵書愛を物語るものであった…。読書にまつわる様々な話を辿るうちに、人間と書物のつき合いという、魅惑のドラマが立ち上がってくる。
目次
枯葉
ページのめくり方、東西
出会い
すれ違い
唐代のミステリー
この親にして
筆名と異名
草木の名
失われた本
貨狄像
黙読
蔵書印
本占い
細部の効果
記憶術
儒者と怪談
匂いガラス
浮世ばなれ
近視
多読
精読
話の出どころ
盲目
夢中の詩句
丘のうえの洋館―寺田寅彦
シンデレラの変貌
記億違い
木の橋の記憶
著者等紹介
鶴ヶ谷真一[ツルガヤシンイチ]
1946年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。エッセイスト。著書に、『書を読んで羊を失う』(第48回日本エッセイスト・クラブ賞受賞、白水社)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
24
「讀書亡羊」―羊の放牧中、読書に夢中になるあまり、肝心の羊に逃げられてしまったという『荘子』の故事。一般にネガティブに用いられるけれど、編集者であった著者の本への愛情を知ると、「読書がいかに人の心をとらえたか」と、プラスの意味へと転化する。 近世·近代の日本を中心に、古今東西の本、読書にまつわる話が縦横無尽に展開される。二千年以上昔の、師弟が静かに豊かに語り合う情景を浮かび上がらせる、『論語』の細部の効果など、興味深い挿話に満ちている。 その中で、多読と精読についての文章に考えさせられた。⇒2019/05/26
たろさ
16
[図書館本]著者の書物の知識の広さにうっとり。特に「枯葉」が好きだ。紙魚を初めて知ったのは蟲師だったかxxxHOLiCだったか。古本はそこそこ購入しているが銀杏や朝顔の葉が挟んであったことは残念ながら一度もない。「精読」「記憶違い」人の繋がりの不思議さ。「ページのめくり方、東西」縦書横書で文字を追う目線の動き方やページをめくる指の動きが違うなんて考えたこともなかったが読むとなるほどと思う。読めない人名や斜め読みもあったがとても楽しい読書の時間だった。書物にまつわる話を直接聞いてみたい。2018/08/05
ぐっちー
15
時代も洋の東西も超え、筆者の読んできた本の中から次々とエピソードが連なり出てくる。蓄積された知識が押し付けがましくなく、ごく自然に繋がり、広がってゆく。広く深い海の中に漂う心地よさ。2014/09/13
ぐるぐる244
11
表紙絵「本の虫」カール・シュピッツヴェーク。最近何冊か読んだファンヒューリック(筆者によればファンフーリク)が取り上げられていて、ヒューリックは探偵小説は西洋ではなく中国で先に生まれた、と考え、実際に中国の古典を英訳、東京で自費出版したそう。西洋人が漢字という特異な文字を習得したのはすごい。自分の古文、漢文の素養のなさがはずかしいばかり。丘の上の洋館-寺田寅彦ーが印象的。2018/12/20
不在証明
11
しかし精読とは本来、多読の末に到達するものではないだろうか。-読んで読んで読んで読んだ先に見えてくるものがある。自分はどんなものが好きなのか。自分の求めている本はなんなのか。本に限らず、なんだってそうだろうけど。やってみなきゃ、わからない。読んでみなきゃ、わからない。まだまだだ。全然読み足りない。書を読んで羊を失う、もとい書を読んで仕事を失う、くらいになりたいものだ。(余談;以前は仕事中に本読んでて怒られたんですが、仕事を失うまでには至っていない模様。最近はむしろ呆れられている。)2015/06/12
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