内容説明
命を助けられた狐が美女と化し嫁に来て子供を産む話、複数の男に乱暴された女の幽霊が四十年後に身の潔白を夢の中で訴える話等々、人間は死ねばすべて鬼となると考えられていた清時代の人間と幽霊と狐をめぐる怪異譚が満載。『聊斎志異』と双壁をなす志怪小説の代表作。
著者等紹介
紀〓[キイン]
1724‐1805。清代中期の学者。1754年進士に及第し、翰林院編修から侍読学士に累進した。68年罪に問われ、ウルムチに流される。のち四庫全書館の総纂官として編纂の事業を統括
前野直彬[マエノナオアキ]
1920年、東京生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学文学部教授、のち名誉教授。98年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
33
清代の怪談集。知人から聞いた話も多く含まれているため、何やら当時の実話怪談のような趣もある。一読して思ったのは、幽霊や狐の話が中心だが、彼ら現世の人間のモラルに縛られすぎ。日本の狐が悪戯で人を騙すのに対して、これは人一人騙すにしても異常に理屈っぽい。あと現世の行いに対して来世での裁判を受けるという話が多いのは著者が官職にあったためか。読んでいると中国人が何となく現世を主に考えるというのが頷けるような内容が多い。ともあれ日本とは一風変わった怪談集、楽しませてもらえました。2013/02/23
アカツキ
13
清時代の怪異譚をまとめた「灤陽消夏録」「如是我聞」の抄訳。道理が通っていれば神様さえ引き下がる世界観が面白い。幽霊や狐の話、善行悪行がその身に返って来るという道徳的な話が多いけれど、女性として生きるには難易度が高い時代だなと思うところが多々…。女を食うにしても殺してからさばけばいいのに生きたまま肉を削ぐって…化け物より人間の方が凶悪。キョンシーが出てきてテンションが上がった幽幻道士世代。2022/09/29
澤水月
11
淡々と短く「誰それ(身分・地域・実名も)」から聞いたという怪異ずらり、「平成実話怪談」的。聊斎志異を奇想溢れる怪奇小説とするなら80年後の本書はルポ、時折身も蓋もない。「尻拭いた紙で化け物の口拭ったら嘔吐し消えた」「空からガチョウやアヒル降った」(ファフロツキーズ!)とか。霊や狐だけでなく、宦官二人を匿い「足柔らかくする薬」飲ませ纏足化、妻妾同居した男など奇談も。著者が左遷され新疆ウイグル・ウルムチにあった時期もあり中国風だけでない話も多々、リアルや泉下の裁判公正さ訴える話目立つ。綺堂に影響と知り読む2022/04/21
misui
7
清代の志怪小説。ポスト『聊斎志異』ということで、「誰々から聞いた」という風に話の出処をしっかりとさせて記述も簡明。狐や幽霊(鬼)が頻出するものの、大半の話はモラルを説くことに力を注いでいる。中でも、幼時の遊び友達が後年になって泥人形だったと判明する「68 泥人形の兄」、密室から消えた4人が遠く離れた井戸の中で死んでいた「72 僧と道士」、幽霊から聞いた話を話してくれたその人も幽霊だったという「94 飲み屋の幽霊」、死事のある家の軒先に鳥を投げ込む凶神の「103 鳥をかついだ男」などが好み。2015/07/02
るすみら
7
文字通り、中国の怪異譚を集めた本。読みやすく持ち運びやすく、楽しい一冊。 著者の紀昀(きいんと読む。字は暁嵐)は1724生まれ1805没。乾隆帝に重んじられ、四庫全書の総纂官をつとめた清朝の学者。当時の偉い人が書いた割には、偉ぶった雰囲気は無い。内容は創作モノではなく、親戚や使用人など誰かから聞いた話が超ぶっきらぼうに書かれていておもしろい。蒲松齢の聊斎志異とは違うおもしろさ…かな。ちなみにこの本は抄訳もの。中国古典小説選11巻や中国古典文学大系42巻は全訳が載っていると推測されます。2009/04/12
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